地球地学紀行
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4_26 いろいろな山脈:日高山脈2

(2002年10月24日)
  日高山脈には、列島形成の秘密の鍵があります。それを多くの地質学者が、長い時間をかけて解明してきました。そんな積み上げられた、研究の成果を紹介しましょう。2002年7月30日から2泊3日で、北海道の日高地方の地質見学の第2弾です。


 山脈は、日本列島の各地にあります。列島の山脈の並びはでたらめにあるのではなく、ある規則性があります。その規則は、列島の延びている方向へ山脈も延びています。それは、海岸線の伸びている方向とも一致します。もう少し広く見ると海溝の延びる方向にも並行しています。
  このような一般的な規則は、世界の地形に通じるものです。南米のアンデス山脈、北米大陸のシラネバダ山脈、比較的新しい時代にできた山脈にはこのような規則にそっています。
  山脈の代表として東北日本を考えましょう。東北日本の山脈には、火山があります。あるいは火山が山脈を形成しているともいえます。火山は海溝と平行して活動しています。海溝に近いところでは、火山はなくなりますし、遠くなってもなくなります。つまり、海溝に平行に、ある幅で火山が形成されています。これが、山脈のできかたの典型的なものです。いちばん海溝に近い火山を地図の上で書きますと、きれいな火山の線(火山前線、Vlocanic Front)ができあす。
  もちろん、例外もあります。マリアナ海溝に並行する山脈はありません。伊豆半島から南に延びる列島があるだけです。このような島々は山脈とはいえません。北海道の山脈も中部地方の日本アルプスも、列島、海岸線、海溝など並びからずれています。今回のテーマである日高山脈も例外となります。けっこう、例外も多そうです。では、上で述べた規則性は偶然の産物なのでしょうか。
  じつは、例外も、それなりの理由があるのです。例外にもいくつかの規則性があります。ひとつは、伊豆半島から小笠原の列島のように、列島としてはまだ、成長途中で、いってみれば、これから列島へと成長しつつあるものです。このようなものを未成熟といいます。
  そして、東北日本のように、「列島らしい」列島を、成熟した列島といます。成熟している列島には、火山が形成されています。
  さらに、時間が経過すると、過去の火山やめくれあがった大地などが形成されます。その一つの典型が、日高山脈なのです。そこには、過去の海溝と火山が再現されます。それに、海溝の周辺の海洋をつくっていた地殻もあります。さらに、火山の下の列島の深部をつくっていた岩石が、めくれ上がってでてきています。
  さらに進むと、かつては広くあった海が完全に海溝にもぐりこみ、つまりなくなり、海の両側の大陸がぶつかってしまうこともあります。それが、ヒマラヤ山脈からトルコ、アルプス、ピレネーへと続く山脈群です。そこには今は地中海のように小さくなった、巨大なテチス海があたのです。ヒマラヤではインド大陸が衝突して山脈も大きく成長しました。
  また、海洋地殻が海溝にもぐりこむこと、つまり一方から強く押されると、地球は丸いので、おおきな断裂、断層ができます。そこでも、断層によってめくれあがることがあります。フォッサマグナとよばれる日本列島を断ち切るような断層があります。その断層は非常に落差が大きく、両側の地層はまったく違ったものとなっています。そしてめくれあがってできたものが、日本アルプスです。ニュージーランドの南島のサンザンアルプスは、断層によってめくれあったものです。
  つまり、山脈と一口にいっても、列島の成長過程や構造に応じて、いくつかの種類ものがあるのです。日高山脈に触れる前に、山脈の説明で多くを使いました。次に日高山脈の話にしましょう。