地球地学紀行
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4_24 ハットンの火成説:イギリス3

(2002年10月03日)
 今回、ハットンのスケッチのある地点として、エディンバラ市内の東部にあるホリーロード公園というところも見ました。その紹介をしましょう。

 ハットンは、エディンバラを活動の場としていました。ですから、地質調査も、もちろん、エディンバラを基点としていたはずです。その証拠として、エディンバラの町の中に、ハットンが重要な考えを得た地質の現象があります。そのスケッチも残っています。
 そこは、エディンバラの市内で、高さ220メートルほどのアーサーズ・シート(Arthur's Seat)呼ばれる山があります。その山並みは、市外から見ると、山の中腹に10メートルほどの厚さの岩石の帯が見えます。
 その岩石の帯の見える山を詳しく調べたハットンは、いまでは当たり前となった、火成(かせい)説の証拠を見つけ出したのです。
 その岩石の帯の下に岩石がむき出しになっているところがあります。その岩石は、ドレライト(dolelite)とよばれる種類の岩石でした。そのドレライトを、近づいて観察すると、地層にほぼ平行にドレライトがあります。その下には赤い砂岩から泥岩が層をなしてあります。ですから、ドレライトも地層のように、水中でたまったように見えます。水成説を唱える人たちは、そう考えていました。
 詳しく見ると、水中でたまってはできないような現象を、ハットンは発見したのです。それは、下にある堆積岩の一部が、めくれ上がって、ドレライトのなかに取り込まれているところがあったのです。このような現象は、上から順番にたまる地層としてはできないものです。
 ドレライトが地層の間を分け入るとき、マグマに引っ掻かれて、マグマの中に地層がめくれ上がったのです。ハットンは、これをマグマの存在の証拠として示しました。マグマが地層に入り込む現象は、現在、貫入(かんにゅう)とよばれます。しかし、今回のように地層に平行に、貫入した岩石を、シル(sill)と呼んでいます。
 ドレライトは、玄武岩のマグマが、地中でゆっくりと冷えたものです。斑レイ岩よりもっと浅いところ、つまりやや早く冷え固まりましたす。ですから、斑レイ岩より粒は細かいのですが、目で見えるほどの結晶からできている岩石です。マグマが冷え固まったのですから、熱い物質から形成されました。
 本当は、地層を切ってマグマが貫入したもの(岩脈(がんみゃく、dyke)と呼びます)があれば、一目瞭然で、わかりやすかったのですが、なかったようです。幸いにも、シルが地層を巻き込んでいるところがあったので、ハットンは、マグマのしわざと見抜けたのですが、このような現象がなければ、ここでは、火成説を証明するのは難しかったでしょう。
 もちろん、日本は、火山国ですから、さまざまなタイプの岩脈を、多くの地域で見ることができます。
 重要なことは、自然を見る視点だということです。少々材料が不十分でも、たとえば、火成説で自然を見ていけば、その考えを支持するような証拠をみつけだすことができるのです。そのような視点を持てたかどうか、そしてその視点で、自然から証拠を見つけることができたか、その点が重要です。
 不整合とともに火成説も、ハットンの自然の見方が正しかったので、見抜けたのです。