地球地学紀行
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4_22 スコットランドの地質:イギリス1

(2002年9月19日)
 2002年8月31日から9月10日まで、地質学発祥の地、イギリスに行ってきました。調査で訪れた地域は、イギリスの北半分にあたるスコットランド、その都エディンバラと、その東方地域です。今回から3回にわたって、イギリスの地質紀行です。

 今回訪れたスコットランドは、東−西から北東−南西に伸びる大きな断層が、何本かある地域です。エディンバラとその東方の地域は、北の大グレン断層(Great Glen Fsult)と南にあるハイランド境界断層(Highland Boundary Fault)にはさまれた地域です。このように地質学的に重要な意味のある大きな断層を構造線と呼ぶことがあります。
 大グレン断層は、北東−南西方向に、アイルランド地域に大きなくびれをつくっています。この断層内には、ネッシーで有名なネス湖などがあります。
 ハイランド境界断層は、イングランドとスコットランドの境界付近にある断層です。この断層の北側には、シルル紀の地層を主として、北側にデボン紀の地層が不整合によって重なっています。南側はデボン紀から石炭紀の地層を中心としています。
 スコットランドやイングランドの古生代の地層は、カレドニア造山運動によって形成されたものです。カレドニア(Caledonia)は、スコットランドのラテン名にちなんでいます。7月に訪れた、カナダのニューファンドランドの地層と連続しています。
 私が7月にみたニューファンドランドの堆積岩は、カレドニア造山運動の初期の活動ですが、スコットランドで今回見た地層は、カレドニア造山運動でも後期のものなります。さらに、イングランド側は、もっと新しい時期のものとなります。
 エディンバラやスコットランドの町並みは、赤い石でできています。この赤い石が、イギリスのカレドニア造山運動を象徴するかのような、旧赤色砂岩と呼ばれる岩石です。
 赤い色が特徴のこの旧赤色砂岩は、旧赤砂岩ともよばれるます。赤から赤褐の色をもつ砂岩からレキ岩の粒の粗い堆積物がからできています。デボン紀(4億850万〜3億6250万年前)には、山脈囲まれたオルカディ湖(Lake Orcadie)と呼ばれるの環境で、激しい川の浸食で多くの堆積物が、湖には運び込まれました。このような海ではない、陸でたまった(陸成といいます)堆積岩が、です。
 旧赤色砂岩は、イギリスやアイルランドに広く分布しています。コニーベア(W. D. Conybeare)とフィリップス(J. Phillips)が1822年に命名しました。厚層で、スコットランドでは、層厚5000mに達するところもあるそうです。
 私が訪れたニューファンドランドとスコットランドのどちらも、当時存在した大きな海、イアペタス海の北側にできた陸地です。イングランドの南の陸地はまだ見ていません。イアペタス海の向こう側は、私には、まだまだ遠いようです。