地球地学紀行
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4_21 カルスト:山口2

(2002年9月12日)
 秋吉台は、石灰岩の台地です。そして、その地下には、鍾乳洞(しょうにゅうどう)があります。そして、日本でもっとも有名な鍾乳洞のひとつ、秋芳洞(あきよしどう、とも、しゅほうどう、とも読まれます)もあります。学会の折に、そこを訪れました。石灰岩がつくりだす奇妙な景観を探っていきましょう。

 鍾乳洞は、石灰岩の台地の地下にできた洞窟(どうくつ)のことです。大気中の二酸化炭素を溶かし込んだ雨水が、地下の石灰岩を、長い時間かけて、ゆっくりとゆっくりと溶かし続けたものです。鍾乳洞のなかには、自然がつくりだした、美しい造形物がみられます。
 石灰岩をとかし、石灰分をたくさん含んだ地下水は、ゆっくりと流れるところでは、その石灰分を沈殿しすることがあります。それが、鍾乳洞のなかに幻想的な模様をつくります。天井から垂れ下がった鍾乳石、下から延びていく石筍(せきじゅん)、そして上下のものがつながった石柱、皿を並べたような形態(千枚皿とか百枚皿とか呼ばれます)、また丸い丘陵のような景観もあります。
 秋芳洞の代表的景観として有名なのは、「百枚皿」とよばれています。棚田のような皿が、実際には、500枚以上あるといいます。似たようなものとして「千町田」というものものあります。石筍としては、高さ約15mの「黄金柱」と呼ばれる見事な石筍があります。
 秋芳洞は、その全長は10kmほどあるとされていますが、現在、1.5kmほどが一般公開されています。広いところでは、幅が約100m、高さが約40mもあります。秋吉台には、250以上の鍾乳洞があるといわれています。1922年(大正11)に、日本で、最初の鍾乳洞として天然記念物に指定され、1952年(昭和27)には、特別天然記念物に指定されました。
 地表に目をやると、そこにも石灰岩のつくる景観があります。岩石が雨水によって溶けていく作用(溶食(ようしょく)といいます)で、地表に不思議な石灰岩の塔が乱立し、地下に洞窟などの地形ができたりします。また、溶けた成分が沈殿したりをつくったりする鍾乳洞内の微地形も含めて、カルスト地形といいます。
 カルストは、その地形や景観が変わっているので、細かく呼び名がついてます。鍾乳洞中だけでなく、地表のものに対しても、いろいろな呼び名があります。
 地表に出た石灰岩では、その表面に、溶食によってできた深い溝、細かすじの溝(条溝)、割れ目ができたり、先がとがったもの(尖頂(せんちょう)と呼ばれます)や、丸くなったもの(円頂)など、さまざまな形のものができます。このような石灰岩特有の表面のかたちは、カレンあるいはラピエとよばれています。そして、カレンがたくさんある地域を、カレンフェルトとよんでいます。地中に浸透した地下水により溶食がすすみ、天井が落ちて、地表の穴が開いたドリーネや、地下の洞窟である鍾乳洞ができます。
 鍾乳洞は、外気が入ったり、人が入ったり、照明が当たると、埃がついたり、コケが生えたりして、「汚染」されます。ですから、鍾乳洞をみるのなら、オープンされてすぐのものや、人があまり入らないものが、その石灰岩の色はきれいです。形態は汚染されることはありません。ですから、秋芳洞の鍾乳洞は、「汚染」はかなり進んでいますが、景観のすばらしさが、いまだに多くの観光客を集めているのでしょう。