地球地学紀行
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4_11 カナディアン・ロッキー山脈

(2001年8月9日)
 カナディアン・ロッキー山脈を1週間にわたって、満喫しました。木々の緑、地層、氷河、川、雲、空とが織りなす自然の模様の中に浸りました。そこで重要な役割を果たすのは、山脈の主役となる地層です。ロッキー山脈の地層について見ていきましょう。

 カナディアン・ロッキー山脈には、アルバータ州とブリティッシュ・コロンビア州の2つにわたって、5つの国立公園があります。
 バンフ(Banff)国立公園は、1885年にカナダでは最初の国立公園、北米で2番目、世界で3番目の国立公園です。そして、一般的なアプローチとして、カルガリーからカナディアン・ロッキーにはいると、最初に訪れる国立公園になります。
 バンフ国立公園の北側には、ジャスパー(Jasper)国立公園があります。両者の境界は、コロンビア氷河を間近に見る峠にあります。南西隣にはコーテナリ(Kootenay)国立公園が、西隣にはヨーホー(Yoho)国立公園が、西に少し離れて、氷河(Glacier)国立公園とレベルストーク山(Mount Revelstoke)国立公園があります。
 国立公園毎に特徴があるのですが、主役は、なんといっても山々です。その山々が、さまざまに傾いたり曲がったりしている地層からできています。地層の傾き加減がさまざまで、それぞれ個性を持った山となります。同じ山でも、見る方向によって、地層の傾きによって、全く違う見かけの山となります。
 地層は、海にたまった土砂が固まった堆積岩です。古い時代の地層ほど下になりますので、その地層をつくる岩石は硬くなっていきます。しかし、山脈をつくるような地球の営みがあると、その地層の重なりは乱れて、複雑になっていきます。古い地層が上で、新しい地層が下ということも起こります。
 ロッキー山脈は、西から東へ、主稜線(Main Ranges)、その西の山並み(Front Ranges)、前縁部の山並(Foothillos)をへて、大平原へと変化していきます。主稜線は、古生代(カンブリア紀〜シルル紀、一部プレカンブリア紀)の比較的平らな地層からできています。その西の山並みは、きつく傾斜し、曲がった古生代の石灰岩や苦灰岩の地層からできています。前縁部の山並は、中生代(ジュラ紀〜白亜紀)の砂岩、頁岩、石炭の地層からできています。
 海でたまったものが、海抜3000メートルを越える山となるには、地球の大いなる営みが必要です。それは、プレートテクトニクスと呼ばれる営みです。
 カナディアン・ロッキー山脈の地層は、20億年以上前から、大陸棚にたまり続けた地層で、その厚さは6000メートル以上に達すると考えられています。その後17億〜5億年前にかけて、西にあった沈み込んでいく海のプレートに押されて、大陸棚に広くたまった地層は、縮められ山ができ始めました。山脈と大陸棚の間には内海があり堆積物は溜まりつづけます。
 縮む時に、ある場所では、地層がひどく曲がりくねりました。このように曲がった地層を褶曲といいます。現在の位置でいいますと、西から東に押されて地層が曲げられました。そのために、ロッキー山脈は、南北に長く伸びる山並となったのです。
 大規模な褶曲では、古い地層が新しい地層の上にある(逆転といいます)というよう状態ができます。地層がたまったときとは、全く違った状態がつくりだします。このようなプレートテクトニクスという地球の営みによって、巨大な山脈ができたのです。