地球地学紀行
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4_7 桂林にて(中国への旅2)



桂林の景色
(2001年4月5日)
 中国大陸には、日本人が、あるいは誰でもが、感動する景勝地が多数あります。日本の拍子抜けするような観光地に比べれば、圧倒的な迫力と説得力を持っています。中国広壮族自治区にある桂林は、そのような所です。山水画でよく見る、「あの」中国的な景色の一つです。だれもが写真を見れば、「ああ、あそこか」というほど有名な所です。

 2000年10月25日から11月1日にかけて、中国に行った折に、桂林を訪れました。予想にたがわぬ観光地でした。観光地特有のスレた人達が一杯いましたが、その景色には感動しました。異様な地形、日常感覚とは飛び離れた景観です。それが感動的なのです。その感動の元は、地形自体が箱庭的なのに、そのスケールが大規模であることだと、私は分析しています。
 箱庭は何となく、ほっとさせる安心感や、自由さとロマンなどがコンパクトに収まっています。それはそれでいいのですが、やがてその箱庭が巨大で、自分の体の小ささを感じると、畏怖の念が生じます。さらに、そこに息づく自然や生命、人々の生活を目にすると、そのスケールの大きさの中に親しみを生じてきます。
 この桂林の地形は、長い時間と大地や地球の営みがつくり上げたものです。桂林の峰峰を構成しているのは、石灰岩と呼ばれる岩石です。石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)からできている方解石と呼ばれる鉱物が主成分です。石灰岩は、生物の化石が見つかることがあります。サンゴ虫や層孔虫などの体やその破片からできています。サンゴ虫や層孔虫は、礁をつくる生き物です。古い時代では、層孔虫が礁をつくり、新しいはサンゴ虫が礁をつくっています。
 石灰岩は、生物がつくった海の中の巨大な島なのです。それが大地の営みによって陸地に上げられたのです。その後、長く雨や地下水などの侵食作用によって、大部分が溶かされたり削られたりして、今の地形となったのです。
 数億年に及ぶ長い時間の流れが、この桂林の地には刻まれています。そして、これからもこの地形は変化を続けいきます。やがてはなくなってしまかもしれませんが、それも地球の摂理かもしれません。