地球地学紀行
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4_5 最古の海の証拠(グリーンランドへの旅3)


イスアの枕状溶岩
(2000年3月22日)
 海というと、海水のあるところです。では、海と陸との違いは、海水があるかないかの違いだけなのでしょうか。もっと違う部分が海の底には隠されています。

 海と陸の違いは、水のあるなし以外にもあります。岩石が違います。陸をつくっている岩石は、花崗岩と呼ばれるものです。墓石や石材としてよく使われている御影石とも呼ばれるものです。一方、海底をつくっている岩石は、玄武岩(げんぶがん)と呼ばれるものです。
 花崗岩も玄武岩もマグマからできものです。しかし、玄武岩とは花崗岩とはおおいに違います。花崗岩は、マグマが深いところでゆっくり冷えて固まり、大きな結晶(鉱物)からできている白っぽい深成岩です。玄武岩は、マグマが海底に噴出して急速に冷えて固まり、小さい結晶や結晶しきれずにガラスのなって黒っぽい火山岩です。
 さらに、海と陸の違いは、海をつくる玄武岩が新しい(大部分2億年より若い)のに対し、陸の花崗岩は、新しいものがありますが、大部分は古いものが多くなっています。ですから古い海の岩石は、海にありません。陸のあります。かつて海底の岩石であったものが、大地の営みによって大陸に持ち上げられたものが時々あります。そのようなものを探せば、海の化石ともいえる海底の岩石が見つけることができます。
 グリーンランドのイスアには、地球で最古の海の岩石があります。最古の堆積岩も海の証拠ですが、最古の海洋地殻もイスアから見つかっています。イスアから見つかっている海洋地殻の代表的なものは、玄武岩の枕状溶岩です。枕状溶岩とは、玄武岩が海の中で噴出して、溶岩が枕を積み重ねたような構造になったものです。
 グリーンランドのイスアで見つかる海洋地殻は、現在の海洋地殻と同じだと考えられています。イスアの岩石類が形成された年代は、今から約38億年前です。つまり少なくとも38億年前から、今の海洋地殻をつくる地球の営みが起こり、そして現在までその営みは続いているのです。