地球の仕組み

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Essay ■ 3_208 下部マントルの鉱物 5:下部マグマオーシャン
Letter■ 推定から実在へそして過去へ・寒波
Words ■ 冷え込みが厳しいです


(2022.12.22)
 隕石から発見された鉱物は、下部マントルに存在すると推定されていた特徴をもっていました。推定が実在になったため、地球の深部を探る手かがりとなります。それだけでなく、地球初期の手がかりともなりました。


Essay■ 3_208 下部マントルの鉱物 5:下部マグマオーシャン

 今回報告されたブリッジマナイトは、以前に見つかっていたものと比べて、アルミニウムを含んでいることが、大きな違いとなっていました。
 ブリッジマナイトは極めて高圧の条件(約23から25GPa)でできる結晶です。その条件は、地球の下部マントルに相当します。合成実験からは、下部マントルを構成するブリッジマナイトには、アルミニウムを含むと考えられていました。以前見つかった隕石のブリッジマナイトには、アルミニウムが含まれておらず、推定されていたものとは異なった化学的性質を持っていました。今回のブリッジマナイトには、アルミニウムが含まれていたので、下部マントルにあると推定されていた組成のブリッジマナイトが実在することが明らかにされました。
 ところが、アルミニウムが多く含まれたブリッジマナイトの隕石での形成条件は、現在の下部マントルとは異なっています。衝突で衝撃によって瞬間的に発生した高温高圧条件で、岩石が溶けた脈の部分から見つかりました。マグマの状態からできた鉱物だったのです。
 現在の地球のマントルは固体で融けていません。ですから、地球の下部マントルのような高温高圧であったとしても、融けたマグマの中という条件となります。そして、そのマグマにはアルミニウムが多く含まれていたということになります。そんな条件は現在の地球にはありません。
 マントルにもアルミニウムは存在しますが、主成分ではありません。液相があれば、そこに入りやすい元素で、固化する時も長石などの軽い鉱物に含まれます。現在の地球では、地殻に多く分布する元素となります。
 では、地球の下部マントルのアルミニウムが多く含まれたブリッジマナイトは、どのような形成過程を経てきたのでしょうか。
 材料物質がまだ衝突合体を繰り返している地球形成初期のころです。次々と隕石が衝突するたびに、その付近は融けてマグマが形成されていました。材料からは二酸化炭素を多く含むガスも放出されました。ガスは原始地球の大気となり覆い、強烈な温室効果が起こっていました。衝突で放出される熱と温室効果で、地球表層はマグマが海となります。このような状態をマグマオーシャンと呼ばれています。表層のどの程度までとけていたが諸説ありますが、少なくとも数10km、多ければ2000kmまで融けていたと推定されています。
 マグマオーシャンは、液相ですからアルミニウムが多く取り込みます。アルミニウムの多いマグマオーシャンの深部であれば、今回新たに見つかったアルミニウムが多く含まれたブリッジマナイトができるかもしれないということです。
 このような状況を想定すれば、地球ができたときには、アルミニウムが多く取り込むような条件があったかもしれません。今回のエッセイのテーマは「下部マントルの鉱物」でしたが、下部マグマオーシャンの高圧条件でできたかもしれない鉱物が発見されたことになります。
 形成条件は異なりますが、これまで実験や地震波など調べられていて存在が推定されたいものが、現実に発見された鉱物になりました。その鉱物は、地球深部を探る手がかりだけでなく、地球初期の手がかりともなっていました。
 課題もありそうです。それは次回としましょう。


Letter■ 推定から実在へそして過去へ・寒波 

・推定から実在へそして過去へ・
今回の新鉱物の発見は、
推定から実在という認識を新たに生みました。
一つの発見ですが、それが地球深部の推定を、
より確からしいものに変えました。
ただし、その発見は、現在の条件とな異なった点もありました。
その相違点は、地球初期の存在したであろう
マグマオーシャンの状態で説明できそうです。
さらに推定は過去へと話が進んでいきそうです。

・寒波・
先週はじめは温かい低気圧で雨でしたが、
その後の北海道は寒波が襲っています。
寒さが一段と厳しく、
ストーブも強めにしなければなりません。
気温変化が激しいです。
現在、冷え切った空気の中にいます。
今年の冬は寒さが厳しそうです。


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