地球の仕組み

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Essay ■ 3_206 下部マントルの鉱物 3:隕石内の高温高圧
Letter■ サバティカル・寒波
Words ■ 寒波の休み明けの日は、研究室もなかなか暖まりません


(2022.12.08)
 合成された結晶は、人工物です。天然物のみが鉱物になります。地下深部の条件の高温高圧で結晶を合成しても、自然界で発見されなければ鉱物とはなりません。そんな高温高圧条件が隕石で発生しています。


Essay■ 3_206 下部マントルの鉱物 3:隕石内の高温高圧

 結晶とは、原子が規則的に配列したもので、人工でも天然のものでもすべてを含んでいます。鉱物とは、天然に存在しているものだけをいいます。地球深部の高温高圧条件での合成実験で結晶ができたとしても、天然に存在していることが示されなければなりません。そんな高温高圧実験でしかない結晶も合成されています。そのため、自然界で見つけようという努力はなされています。
 自然界で高圧高温が発生する場として、クレータがあります。火山によるクレータもありますが、ここでは隕石の衝突によってできるクレータのことです。隕石の落下で、一瞬ですが高温高圧が発生します。衝撃による高温高圧の発生は、実験室の合成でも用いられている手法ですが、クレータは大規模に起こったものです。衝突クレータを探すことで、高温高圧でできる結晶が発見され、鉱物と認定されてきたことも何度かありました。
 隕石は、どこから由来するのでしょうか。隕石は、もともとどこかの天体(母天体と呼ばれます)を構成していた岩石が、小天体の衝突によって飛び出したものです。飛び出した岩石のうち、地球の交差する軌道をもったものが、隕石として地球に落下したものです。
 小天体の衝突の規模が大きければ、高温高圧状態が出現するはずです。隕石には、高温高圧の変成作用や衝撃による変形作用が記録されているものも見つかっています。高温高圧条件の履歴を持った隕石を調べれば、天然の高温高圧結晶が見つかるかもしれません。
 マントルの深部の条件での合成実験で、1970年代にはペロブスカイト構造をもった結晶だとわかってきました。その後、1990年代にテンハム隕石とAcfer 040隕石から、結晶が見つかりました。結晶は「ブリッジマナイト」という鉱物名が与えられました。
 ブリッジマナイトは、頑火輝石(エンスタタイト)という鉱物が高圧になってできたものです。頑火輝石は、マントルのカンラン岩の構成鉱物ですが、隕石(普通コンドライトと呼ばれるタイプ)を構成している鉱物でもあります。ですから、変成作用や変形作用を受けた隕石を探せば、見つかる可能性があったのです。
 最近、別の隕石からもブリッジマナイトが見つかったのですが、その鉱物は、以前見つかったものとは少し異なった性質を持っていました。その詳細は次回としましょう。


Letter■ サバティカル・寒波 

・サバティカル・
来年4月から半年間、サバティカルで愛媛県に滞在します。
その決定自体は2年前に出ていました。
いよいよその説明会もはじまります。
それに伴って申請書類も
いくつか提出する必要もでてきました。
チケットや引っ越しなども考えなければなりません。
今回は半年で家内も一緒です。
前回は1年で単身でした。
短期間で2名などのなにかと慌ただしくなります。

・寒波・
寒波の訪れで、連日雪となり、
あたり一面、雪になりました。
今まで雪のない冬枯れだったのですが、
一気に白い冬の景色になりました。
連日の寒さで、研究室が冷えています。
服装も靴も厳冬期対応のものにしました。
考えればもう師走ですから、
今年の雪は遅かったことになります。


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