地球の仕組み

戻る


Essay ■ 3_203 海と大気の起源 6:惑星形成過程の解明
Letter■ データの再利用・後期のスタート
Words ■ 夏も終わり秋の訪れとともに後期の講義もはじまります


(2022.09.22)
 大気の形成過程をシミュレーション以外に、他の天体の観測から探られました。特異な成分がある天体として知られていたのですが、既存のデータを詳しく調べることで、新しいことがわかってきました。


Essay■ 3_203 海と大気の起源 6:惑星形成過程の解明

 地球から、95光年のところにあるHD17255は、2300万年前に形成された若い恒星でした。この恒星は地球の近くにあり、若い星なので、恒星や惑星や形成過程を探るに便利です。
 若いため、惑星系の形成の残骸であるガスや岩片が残っている円盤(残骸円盤)があります。このような残骸円盤は、形成まもない恒星系でみつかるものです。しかし、HD17255では、少々異質な成分が見つかっていました。通常の残骸円盤には含まれない微小の鉱物やガスが、大量にあることが事前にわかっていました。
 シュナイダーマさんたちは、アルマ望遠鏡が観測した既存のデータを用いて詳しく分析しました。恒星から約6〜9天文単位(太陽の地球の距離が1天文単位となります)の間に、大量の細かい岩石片とともに、一酸化炭素が環をつくっていることがわかりました。
 このガスは、原始惑星を構成していた大気が、剥ぎ取られたものではないか、ガスの剥ぎ取りは、原始惑星同士の衝突によるものではないか、と考えました。そこから、次のようなシナリオをつくりました。
 この恒星系では原始惑星ができていました。地球サイズの原始惑星もあり、そこでは原始大気も形成されていました。20万年前、大気をもった原始惑星に、それより小さい原始惑星が、秒速10kmで衝突しました。その結果、大きな原始惑星の一酸化炭素が剥ぎ取られたというものです。
 このようなシナリオから、恒星形成期の惑星系では、原始惑星同士の衝突が起こることは稀なことではないと考えました。さらに、そのような衝突が起これば、惑星(例えば地球)に比べて大きな衛星(月)ができることも可能になります。一度形成された原始大気が剥ぎ取られたり、大きな衛星ができることは、それほど稀な現象ではないことになります。
 若い恒星系で、このようなガスの観測を進めれば、できたての惑星の形成メカニズムを解明できるかもしないという指摘もしています。


Letter■ データの再利用・後期のスタート 

・データの再利用・
今回の報告は、新たにおこなった観測ではなく
アルマ望遠鏡のパブリックアーカイブデータとして
公開されているデータを用いたものです。
もともと別の目的で観測されたデータでした。
あるデータを、別の目的で利用したら
新しい事実がわかってきたことになります。
こんなデータの再利用は有益です。
残り物には福があるでしょうか。

・後期のスタート・
北海道は秋めいてきました。
快晴の日は暑くなりますが、
朝夕は涼しくなりました。
今週から後期の講義がはじまりました。
当初は2日祝日があるので、
休み休みでスタートできるので、
夏の疲れも抜けるでしょうか。


戻る