地球の仕組み

戻る


Essay ■ 3_201 海と大気の起源 4:後期天体集積
Letter■ 夏の終わり・サバティカル
Words ■ 北海道は秋めいてきました


(2022.09.08)
 現在の地球と材料の違いを、初期のいくつかの事件を想定して、シミュレーションで検討されました。ひとつの事件では解決できなかったのですが、次の事件で課題を解決することができました。諦めない努力の結果です。


Essay■ 3_201 海と大気の起源 4:後期天体集積

 材料の炭素質コンドライトと比べて、地球の成分が枯渇していたことがわかり、その原因をシミュレーションで探究されました。シミュレーションでは、マグマオーシャンでの出来事に注目されました。
 炭素質コンドライトに含まれていた水の成分が、気体として大気中に放出され、マグマオーシャンに含まれていた水が、岩石に固化するとき大気中に放出されていきます。マグマオーシャンが固化すると、表層も冷えてきて、大気中の水蒸気が凝縮して水となり、海を形成します。大気中の二酸化炭素は、水の溶け込み、岩石から溶け出したイオンと結びついて、炭酸カルシウム(方解石という鉱物)や炭酸マグネシウム(ドロマイト、苦灰石)などになり、炭素は使われていきます。
 マグマオーシャンでの過程を想定しても、地球の成分の枯渇の様子をすべてを説明できませんでした。地球の初期に起こった別の出来事を考えなければなりません。月など、形成初期の状態を残している天体から、マグマオーシャンが固化した後、再度、小天体が激しい衝突した時期があることがわかってきました。後期爆撃(あるいは天体集積)事件と呼ばれるものです。
 この後期天体爆撃事件を想定してシミュレーションが進められました。衝突によって、既存の窒素に富んだ大気を、大半(7割)を剥ぎ取ることで、現在の比率になることがわかってきました。大気を効果的に剥ぎ取るためには、天体サイズが重要な要因になり、サイズの小さい天体が多数衝突することで、現在の枯渇状態が再現できました。これで問題は解決できました。
 この研究の方法論は、次のようなものでした。現在の天体(この論文では地球)と材料(炭素質コンドライト)を比べたところ、天体の成分には違いが見つかりました。その違いは、天体の進化過程によると想定されます。天体の進化でもっとも変化の激しい時期は、形成期だと考えられます。最初の大事件(マグマオーシャン形成、核と揮発成分の分離)で起こる成分の再配分を考えました。しかし、それでも違いが説明できない時は、次の事件(後期天体爆撃事件)を想定して検討を進めていきました。その事件で起こる元素の再配分(剥ぎ取り)を考え、解決に至りました。それぞれの事件の検証ではシミュレーションを手法として用いていました。
 結果がでる(現在の状態が説明できる)まで、次々と条件を変えて研究(シミュレーション)を続けていきました。求めるものがえられるまで、諦めない気持ちが、研究では大切だと思いました。


Letter■ 夏の終わり・サバティカル 

・夏の終わり・
北海道は涼しくなってきました。
この時期になる、すべての前期の校務が終わり、
一段落して、ホッとしている時期です。
例年この時期に、
1週間程度の調査をすることが
多かったのですが、ここ2年間のコロナ感染で、
道内だけで調査をすることになりました。
道内だと、移動距離は長いですが、
3、4泊の調査になります。
この程度の期間だと、
繰り返し各地で調査ができます。
また、講義の合間を縫って調査も可能です。
自家用車でいくので
荷物も好きなだけ詰めるので気軽です。
でも、道外でも調査をしたいですね。

・サバティカル・
来年4月から半年間、
サバティカルをとることになっています。
半年間、以前にも滞在した四国で過ごします。
この期間には講義や校務を気にせず
心置きなく、研究と調査に専念できます。
今回は、家内も同伴なので、
老夫婦でのんびりと過ごしたいと思っています。
そのまであと半年、後期も校務に
励まなければならないですね。



戻る