地球の仕組み

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Essay ■ 3_196 核の水 4:同位体顕微鏡
Letter■ 冬到来・道北調査
Words ■ いよいよ冬が、近くまできました


(2021.10.21)
 岩石中の軽い元素の分析は、なかなか困難です。SIMSでも特別仕様の同位体顕微鏡という装置をもちいることで、水素の濃度を調べることができます。SPring-8と同位体顕微鏡で、これまでにない結果がえられました。


Essay■ 3_196 核の水 4:同位体顕微鏡

 核の金属鉄中の水素の挙動をその場観測をし、岩石(珪酸塩)中の水素の量を調べる必要がありました。それがなされたのですが、まずはその場観測をみていましょう。
 SPring-8で金属鉄中の水素は、定量的な測定はできないのですが、定性的に存在は確認できます。
 タイヤモンドアンビルでレーザーを当てて高温高圧状態にして、溶けた金属鉄とマグマの状態を出現させます。その状態をX線回折装置で調べると、水素と鉄の化合物(FeHx111と呼ばれるピーク)が見つかりました。つまり、高温高圧状態の溶けた状態の核では、水素と鉄の化合物が存在し、それが核の軽元素成分としての有力な根拠を示したことになります。
 さらに実験を続けSPring-8で温度だけを下げると、水素がなくなり固体の鉄だけのX線回折になっていることも、定性的ですがわかりました。つまり、液体金属の鉄には水素が含まれているが、固化すると水素が抜けていくことも検証されました。
 地球初期のマグマオーシャンで溶けた鉄のまま核へ落ちていくことで、水素が抜けることなく、核へ持ち込まれるというプロセスが推定できることになります。
 次は、岩石中の水素の量です。この水素の測定に同位体顕微鏡システムを用いました。この装置は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry 二次イオン質量分析計)を改良したものです。セシウムイオン(一次イオン)を分析したい試料表面に当てると、そこから分子や原子が飛び出してきます(スパッタリング)。目的のイオン(原子核だけになったもの、二次イオン)の質量数だけを分析する質量分析をします。次に、それで一つの分析点として、これを二次元的に繰り返すことで、試料を面として同位体組成を測定していきます。
 この装置は、共同研究者の北海道大学の圦本さんの研究室だけが持っている技術です。この装置では、同位体組成(質量数が異なる元素の比率)を求めることができ、水素も測定可能です。実験した最終の試料を、半分にした断面で分析すると、中心の金属鉄(固体)とその周りの岩石の同位体組成を面として見えるようにできます。
 その結果は次回としましょう。


Letter■ 冬到来・道北調査歩 

・冬到来・
北海道は寒波の到来で寒くなりました。
大学でも暖房が入っています。
自宅でも朝夕には
ストーブを当たり前に焚くようになりました。
札幌でも山並みに冠雪が見えました。
いよいよ冬が到来です。
衣類もだんだん防寒仕様にしていきます。

・道北調査・
調査で道北にでかけました。
ちょうど寒波の襲来の時期で、
週末には、ミゾレに見舞われました。
帰路の峠越えでは、雪になりました。
着るものも冬仕様で、車も冬タイヤにしていたので
調査や移動には問題はなかったのですが、
ミゾレとアラレの間のようなものだったので、
外で調査をしていると
寒さと濡れるので、落ち着いて
露頭を見ることができませんでした。
しかし、予定通りのルートを進みました。


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