地球の仕組み

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Essay ■ 3_180 北磁極の移動 1:ノースアップ
Letter■ クリノメーター・道具の変遷
Words ■ 来週から野外調査にでかけます


(2019.08.22)
 地図は上が北になっていることは、学校で習いました。上が北は地図の基本です。この規則は必ずしも全てに適用されているわけではありません。スマホやカーナビでは、自分の向かう方向が、上になっています。


Essay■ 3_180 北磁極の移動 1:ノースアップ

 学校で習ったように、地図では上が北に描かれています。しかし、街の案内図などでは、上が北でない地図もよく見かけます。紙の地図を持ち歩きながら、野外調査をしてきたものにとっては、北が上ではない地図には、違和感をもってしまいます。最近は、スマートフォーンでの道案内の地図や、カーナビの地図でも、デフォルトでは進行方向が上(ヘッディングアップといいます)になっています。もちろん、設定を変えれば上を北にする(ノースアップ)ことができますが。
 カーナビをノースアップにしても、すぐにヘッディングアップもどってしまいます。目的地をカーナビの地図で探すときにはノースアップにしますが、ナビになると自動でヘッディングアップに戻ります。確かに、南に向かったり、複雑な分かれ道などを進むときには、ヘッディングアップはわかりやすく便利です。
 ヘッディングアップのいい点は、コース取り、ルートがわかりやすい点でしょう。しかし、全体としてどのようなルールをたどってきたのかや、地点の位置関係や土地勘が作りにくくなる、という欠点もあるように思います。ノースアップにこだわっている人は、今でも見かけます。そんな人は多分、昔ながらの地図を用いていた習慣が今でもあったり、土地勘を重視している人ではないでしょうか。
 地質調査をしているとき、地層面の方位を正確に測定しておく必要があります。そのための道具として、方位磁針と目盛り(度数線)の入ったリング(ベゼル)もしくは文字盤があるコンパス(地質調査ではクリノメーターを使用)を用いていました。コンパスがあれば、方位磁針の指す北の方向と度数線から、地層面の方位が数値として読み取れます。
 コンパスから読み取った方位は、磁石の北(磁北)からのズレを数値にしたものです。一方、地図も北極(真北)を北にして作成されています。地図の北極と、磁石が示す磁北が、一致していれば問題はありませんが、少々ずれています。
 地図にコンパスから読み取った値を示すときには、注意が必要になります。国土地理院の2015年のデータでは、北海道では西に9度から10度ずれています(西偏といいます)。本州にいくにしたがって値は小さくなり、沖縄では4度から5度になります。コンパスで読み取った方位データを地図に示すとき、磁北のデータなので、西偏分を考慮して示す必要があります。
 では、そもそも地図の北極は、どのように決められたのでしょう。また、磁石の北極とは、なぜ、ずれているのでしょうか。次回にしましょう。


Letter■ クリノメーター・道具の変遷 

・クリノメーター・
地質調査ではクリノメーターを使用します。
クリノメーターにはコンパスも内蔵されています。
クリノメーターの度数線は、読み取り数値が
そのまま欲しい数値にするため、
南北で線対象の表記になっています。
そのため、コンパスとして用いるときは注意が必要になります。
クリノとは「傾き」という意味ですから
クリノメーターは傾斜計という意味です。
地層の方位と傾きの両方を調べるためのものです。
コンパスとその軸に自由に動く針がついています。
コンパスを傾斜面に立てると
その針で傾きを読み取ることができました。

・道具の変遷・
クリノメーターも進化しています。
私が地質調査を始めたときは、
木の台の中にコンパスと傾斜計が
内蔵されているシンプルなものでした。
その後、金属製のものが普及しました。
私の恩師は、もっとコンパス部が3軸で自由に動く
複雑な構造で高級なユニバーサルコンパスを使っていました。
ある時、もう自分は調査をしないからと、私に譲ってくれました。
それは、今でも手元に持っています。
デジタルクリノメーターというものがあり、
測定値がGPSでの位置とメモリーに記録できます。
一度利用してそのための調査したのですが、
その成果を報告することなく終わってしまいました。
今では、GeoClinoというスマホ用のソフがあります。


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