地球の仕組み

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Essay ■ 3_176 マントル内の水 4:成果
Letter■ 冬到来・卒業研究
Words ■ 身支度が冬用になりました


(2018.11.29)
 計算と合成実験の結果、水酸化鉄が、これまでの考えよりずっと地球深部まで、安定に存在できることがわかりました。その成果の意味するところは何でしょうか。小さな結晶から大きな可能性が出てきました。


Essay■ 3_176 マントル内の水 4:成果

 さてここまでのエッセイで、高温高圧条件を発生し、その場で結晶構造を観察していく、「その場観察」の方法を紹介しました。ダイヤモンドの先端に、高温高圧条件を発生しての実験でした。高温高圧状態のままで、SPring-8で高エネルギーのX線を1μm以下に絞って、結晶構造を調べました。すると、コンピュータによる熱力学的計算で予想さらたとおりに、水酸化鉄(FeOOH)が安定であることが、その場観察で明らかにされました。
 計算によると、水酸化鉄は80万気圧で結晶構造を変え、より高圧条件まで安定であることがわかりました。80万気圧とは、地球で内部でいうと約1900kmに相当します。ダイヤモンドアンビルを用いた実験では、約150万気圧まで実験がなされました。マントルの最下部は深度2700kmで、圧力は125万気圧だと推定されています。実験はそれより高圧の条件ですので、マントルー核の境界の深度2900kmまで安定である可能性もでてきました。
 これまで水酸化鉄は、深部では分解し安定ではないと考えられていましたが、この論文で、より深部まで安定であることがわかりました。地球の水の成分がマントルのどこでも、安定に存在しうることを示していました。
 さて、この結果に、どういう意味があるのでしょうか。いくつか考えられることがあります。
 マントルに水を運ぶ機構は、プレートテクトニクスで海溝で沈み込むことで達成できます。海洋地殻を構成する主たる岩石、玄武岩(鉄を成分として多く含む)が変質を受けると、水を含んだ水酸化鉄ができます。この変質玄武岩が、海溝で海洋プレートとして沈み込み、マントルに入り込むことができます。沈み込んだ海洋プレートは、マントル対流でより深部まで入り込むことになります。プレートテクトニクスは継続的に起こっているので、マントルに水が継続的に持ち込まれることになります。
 地球では水の大半は海にあると思われていましたが、マントルに大量に存在する可能性が出てきました。また、マントルに水が入り込んでいるので、海水は減っていることになります。過去は、現状の海水よりずっと多かったことになります。その変遷過程が問題となります。
 実験では、少なくともマントルー核の境界まで水酸化鉄安定に存在する可能性があります。もし核に水を取り込める結晶があれば、核にまで水が持ち込まれる可能性がでてきました。
 論文では、他にも、核内での上昇流の発生、マントルー核境界の地震波の低速度になる層(D"層内の超低速度層と呼ばれています)の起源、大気中の酸素の濃度、過去の地球表層環境への影響などへも影響する可能性も指摘されています。重要な課題となりそうです。
 日本が世界に誇る技術で、新しい結晶の安定性に関する発見がなされました。ただし、その結晶は非常に小さなもので、その特徴に関する発見でした。発見の成果は、サイズではありません。そこから、地球全体の大きないろいろなことが解き明かされる可能性がでてきたのです。


Letter■ 冬到来・卒業研究 

・冬到来・
北海道のわが町では、先週の連休に、
一気に雪が降り、冷え込みの一緒に来ました。
非常に、遅い初雪となりました。
その後、雨が降りましたが、雪はまだ残っています。
北海道は、初雪があり、冷え込みがあると
いよいよ冬の到来を感じます。
衣類も冬物、厳冬期用になり、
靴も冬靴に変わりました。

・卒業研究・
学科では、卒業研究の提出が迫っています。
4年生は緊張と集中を強いられていると思います。
4年生は過年度生や前期卒業生などを担当していますが
前期に出した学生がいましたが、
今期に卒業研究を提出する学生はいません。
それでも卒業研究の指導をしています。
じっくりと取り組んで行く予定です。


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