地球の仕組み

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Essay ■ 3_174 マントル内の水 2:理論計算とダイヤモンドアンビル
Letter■ 例年とは違う天候・頭を使っている
Words ■ 里の初雪はいつだろう?


(2018.11.15)
 水酸化鉄が高圧でも結晶として存在できることを発見できたのは、日本が誇るスーパーコンピュータ京でのシミュレーション、ダイヤモンドアンビルで高圧を発生した実験、強力な放射光を発生するSPring-8で分析したものでした。


Essay■ 3_174 マントル内の水 2:理論計算とダイヤモンドアンビル

 前回、マントルに水酸化鉄が存在するという報告をお話しました。この報告を発表したのは、愛媛大学の西真之さんと共同研究のチームで、最先端の装置を用いたものでした。最先端の装置とは、京(けい 神戸市の理化学研究所計算科学研究機構 かつては世界最速を誇ったスーパーコンピュータ)、ダイヤモンドアンビルやSPring-8(兵庫県播磨科学公園都市の理化学研究所・播磨研究所 大型で強力な放射光を発生する装置)などを用いた研究でした。その概要を紹介しましょう。
 水酸化鉄は、鉄を含む岩石が水と反応したときできる鉱物です。水酸化鉄は、玄武岩などで簡単に形成され、比較的低圧で安定に存在する鉱物です。水酸化鉄は、これまで高圧になると分解すると考えられていました。しかし、京を用いて理論計算をしていくと、水酸化鉄は高圧(80万気圧付近)でも分解することなく、より高圧で存在できる結晶構造(パイライト型)に変るという結果がでてきました。
 理論計算(第一原理計算と呼ばれています)では、物理条件によって結晶構造が安定かどうかをシミュレーションしていく方法です。量子力学の理論に基づく複雑な計算なのですが、コンピュータの計算能力が上がったことで、より正確に計算できるようになりました。その結果、水酸化鉄は高圧で分解することなく、別の結晶型になって存在できる可能性がでてきました。あとは、実際に実験で確かめる必要があります。
 高圧でできる結晶ですから、高圧状態にしたまま、結晶構造を調べるという技術が必要になります。そこに登場するのが、ダイヤモンドアンビルとSPring-8という装置です。
 ダイヤモンドアンビルの「ダイヤモン」とは宝石のダイヤモンドのことで、「アンビル」とは台座のことです。ダイヤモンドアンビルは、2つのダイヤモンドを台座にした高圧発生装置です。ダイヤモンドの先端を少し平らにしておきます。先端同士を合わせて、平らなところに試料を入れて高圧を発生する装置です。装置自体はシンプルなものです。
 ダイヤモンドアンビルの原理は、平底の靴とハイヒールのカカトで足を踏まれたときの違いを想像するとわかりやすいです。同じ体重であっても、ハイヒールのように尖ったカカトで踏まれるので、非常に痛くなります。これは、同じ圧力(体重)であっても、面積が小さければ小さいほど、大きな圧力を発生することになります。その圧力の発生の原理を、本物のダイヤモンドを使っておこなった実験となります。
 ダイヤモンドを使うのは、SPring-8の能力を使うためです。その内容は、次回にしましょう。


Letter■ 例年とは違う天候・頭を使っている 

・例年とは違う天候・
北海道は、寒暖が繰り返しています。
黒岳には、例年に比べて早い初雪ありました。
私の町から見える山並みにも、少し前に冠雪があり、
その後も何度か山には降雪はありました。
里では、まだ初雪がありません。
これは、かなり遅い記録となっているようです。
先週末には日高に野外調査にいったのですが、
雪がなくて助かりました。
今年は、夏の天候も、台風襲来も、初雪も、
例年とは少々違っているようですね。

・頭を使っている・
今年は研究がはかどっています。
論文を書く時は、頭は休むことなく働き続けています。
頭は、睡眠をとることで休めることができます。
最近、論文を書き続けているので、
頭を使っているためでしょうか。
朝までぐっすり寝れます。
もしかしたら、老化かも。


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