地球の仕組み

戻る


Essay ■ 3_173 マントル内の水 1:水酸化鉄
Letter■ 最後の野外調査・3つの論文
Words ■ 今年の調査も終わりました


(2018.11.08)
 地球深部は、興味深いとろこです。しかし、実際に掘って試料を入手できるのは、ほんの一部です。工夫をして調べるしかありません。実験室で高温高圧条件をつくりだし、深部を再現するという方法があります。


Essay■ 3_173 マントル内の水 1:水酸化鉄

 少々古い記事ですが、2017年7月のイギリスのNature誌に掲載されたものですが、地球内部の水の挙動に関する論文があります。
  The pyrite-type high-pressure form of FeOOH
  (水酸化鉄(FeOOH)のパイライト型高圧型)
というタイトルです。水酸化鉄という化合物が、パイライト型という結晶構造で、高圧で安定に存在することがわかったということを報告しているものです。タイトルは、シンプルなのですが、実は複雑な内容でもあります。
 この水酸化鉄は、結晶ですが、鉱物名がついていないのは、天然の鉱物として見つかっていないためです。水酸化鉄でもいろいろな結晶型があってもいいのです、今回はパイライト型の結晶であることがミソです。
 パイライト(pyrite)とは、黄鉄鉱という鉱物で、化学組成はFeS2です。結晶の形としては、六面体や八面体、正十二面体などになりますが、今回の水酸化鉄では、八面体になっています。今回報告されている水酸化鉄では、正八面体内部の中央に、鉄原子が存在し、6つの角にあたるところに、酸素原子が4つ、水素原子が2つがあります。鉄の周りの酸素と水素の原子の数が、化合物の2倍になっていて少々ふしぎです。それらの元素は、隣の正八面体と共有しているので、実質は半分になるので、鉄原子1個に対して、酸素原子2個、水素元素1個の比率になり、FeOOHという結晶式となります。
 実はこの水酸化鉄は、2016年のNature誌で、マントル深部では、水素と酸化鉄に分解すると報告されていました。今回の報告は、分解せずに安定に存在することがわかったというものです。
 では、この水酸化鉄が、高圧で安定であるということに、どんな意味があるのでしょうか。また、その結晶の形が高圧で存在するはずのものなのに、どうしてわかったのでしょうか。次回以降紹介していきます。


Letter■ 最後の野外調査・3つの論文 

・最後の野外調査・
先週末、2泊3日で、
日高地方へ今年最後になる野外調査にでました。
静内、浦河、様似、えりも、広尾と
日高山脈のふもとを襟裳岬を経てまわりました。
帰りも大樹から浦河に抜ける天馬街道を通りました。
幸い天気には恵まれ、
非常の気持ちのいい調査になりました。
山は紅葉は終わっていましたが、
裾野では、まだ紅葉が残っていました。
心地よい天気で野外調査ができました。
精神心的にリフレッシュしました。
肉体的に結構つかれましたが。

・3つの論文・
現在、論文3編を抱えています。
今月締切の論文が2編(A論文、B論文)、
1月締切りのものが1編(C論文)あります。
今月のA論文は現在推敲中で、時間さえあれば
今週中に投稿できると思います。
なんとか予定通りに進めたいものですが。
B論文の骨子はでき、データも揃いつつあります。
あとは書く時間がとれるかどうかが勝負です。
これは、自分で工夫、優先順位をつけて
都合つけるしかないですね。


戻る