地球の仕組み

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Essay ■ 3_165 ダイヤモンドの年齢 4:2つの年代
Letter■ 科学への貢献・カメのように
Words ■ 3月になりました。はやい・・・


(2018.03.01)
 ダイヤモンドの包有物の年代測定は、小さい上に微量でなされます。その上試料が高価でもあります。でもその年代値には、お金では買えない科学の価値があります。それを理解してくれる人たちも必要になりますが。


Essay■ 3_165 ダイヤモンドの年齢 4:2つの年代

 オランダのアムステルダム自由大学のKoornneefと共同研究者は、南アフリカのヴェネティア(Venetia)ダイヤモンド鉱山から産出した26個のダイヤモンドで年代測定をしました。その年代は、太古代の29億5000万年前で、予想通りの古い年代でした。ところが、もうひとつの年代を示すダイヤモンドのグループがありました。その年代が原生代中期の11億5000万年前のものでした。
 一つの産地から2つの年代のダイヤモンドが見つかったことになりました。それも一方は予想されていた古くもので、他方は非常に新しい年代でした。これは、これまでの結果とは違った年代でもありました。年代の解釈が問題となります。
 先行研究で示さたようにダイヤモンドには、いくつかの化学組成の違いがありました。それらのグループのうち化学組成の多様性が大きいもので、新しい年代がえられたのです。ですから、著者らは、以前の研究でえられた23.0億年前という年代が、これら2つの年代値が混合した「見かけの年代」だと考えられるとしました。この論文で示した2つの年代が、ダイヤモンドの本当の年代を表しているということを主張しました。
 では、2つの年代に、どのような意味があるのでしょうか。
 この大陸の下のマントル(キンバーライトが由来したもの)では、太古代(29億5000万年前)に、ジンバブエ・クラトン(Zimbabwe Craton)の南の端の大地溝帯(大陸の分裂するところ)で流体の混染(汚染)作用を受けてダイヤモンドができました。これが古い年代のダイヤモンドの由来となります。
 その後、原生代中期(11億5000万年前)に、大規模なウムコンド大規模火成活動(Umkondo Large Igneous Province)によって、流体による混染作用が起こりました。その結果、以前に形成されていたダイヤモンドの化学組成が、大きく変更し、それに伴って年代値にも変化が起こりました。ただし、データを見る限り、この地域では、このようなダイヤモンドの年代を変更するような出来事は、一度だけだったと考えられます。
 先行研究の数で勝負の研究では、多様性を把握し分類するために必要なものでした。しかし、今回のように、詳細で精度の高い分析による研究は、より深い理解につながります。先行研究の成果に2つ目の研究の成果があります。


Letter■ 科学への貢献・カメのように 

・科学への貢献・
この論文で用いられたダイヤモンドは
デビアス社から寄贈されたものだそうです。
宝石として利用できないものですが、
価格としてはそれほど高価ではないものだと思いますが、
いずれしてもデビアス社は太っ腹です。
科学への投資は、無駄にはならないことを
よく理解しているのでしょうか。
ダイヤモンドの起源や成因が明らかになることは、
長い目で見れば、今後ダイヤモンド業界にも
きっとメリットがあるはずです。

・カメのように・
もう3月です。
大学は、卒業と新入生を迎える準備に入ります。
そして在学生には新年度のために
実習の事前準備もあります。
月日の流れは速い。
それに比べて私の歩みは、遅い。
成したいこと、成すべきことは
多々あるのに、遅々として進まず。
でも、月日の進みを嘆くよりは
ただカメのように歩み続けるしかないのです。


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