地球の仕組み

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Essay ■ 3_148 マントルの内部構造 1:覗く技術
Letter■ 新陳代謝・海洋調査船
Words ■ 北海道に冬に逆戻りしました


(2016.04.14)
 宇宙の探査は宇宙望遠鏡、地上でも高性能の望遠鏡などが開発され、遠くを、広くを、詳細に観測できるようになっています。その成果はニュースとしてよく目にします。地球内部の成果は地味なのでしょうか、ニュースになる頻度が少ないような気がします。しかし、技術は確実に進歩しています。


Essay■ 3_148 マントルの内部構造 1:覗く技術

 地球内部の構造は、研究が進むとともに、より詳しくわかるようになってきた。地球深部を掘って直接調べるという方法は今でも重要なですが、まだ10kmほどで、地球の6,400kmの半径に比べると、ほんの一部にしか達していません。地球内部を探査するときの主要な手段は地震波です。ほかにも地域ごとの重力の差、地磁気、熱流量、地震の影響による地球自身の振動(地球振動)や、合成実験によるものなど、いろいろな方法で探査されています。それぞれ一長一短があります。
 地震波は、文字通り、地震の振動を利用して探査する方法です。地震は自然現象なので、いつどこで起こるかがわからない現象を利用しているという欠点があります。大きな地震が時々しか起こりませんが、小さな地震は多数起こりますので補えます。地震波の長所は、地球深部を通ってくる経路がわかっているので、他の方法より地球深部を正確に探査することができます。さらに、地震波には、いくつかの波の成分があり、それぞれが地球内部の違う性質の検出に利用できます。
 地震計の感度の向上と、観測データのネットワーク化や地震波解析にコンピュータの導入などにより、マントルの内部構造が3次元的に、より詳しくわかってくるようになってきました。これらの技術は日々進歩していますので、解析精度は向上し、内部構造もより詳しくわかってきています。
 地球内部の概要は、表層5〜70km(海洋域で薄く、大陸域で厚い)の岩石でできた地殻が、その下には地殻より密度の大きな岩石からできたマントルがあり、最深部には鉄でできた核(コア)があることがわかりました。また、地震波の性質から、核の鉄には溶けた鉄の外核と固体の鉄の内核に分かれていることもわかってきました。
 マントル内の構造は、410kmより浅い部分が上部マントル、410から660kmまでは遷移帯となり、660kmから核の境界の2900kmまでは下部マントルに区分できることわかってきました。
 マントル内のそれぞれの物質の様子の違いを検証する方法として、高温高圧実験が有効になります。実験室の装置で、想定されるマントルの物質を、調べたいマントルの部分の温度圧力条件を発生させ、その条件での物質合成をします。その結果、どのような結晶か、どんな性質を持っているのかなどを調べるものです。以前は装置から取り出していましたが、今では、高温高圧の条件に置いたまま調べる方法もあります。
 地震波によって限定されたマントルの条件が重要になってきます。また、高温高圧実験の結果が、地震波の解析にフィードバックされ、解析の精度をより向上させることにもなります。
 そのような研究の結果、マントル対流の実態やマントルと核の境界の詳細などもわかるようになってきました。その概要は次回からとしましょう。


Letter■ 新陳代謝・海洋調査船 

・新陳代謝・
いよいよ大学の講義も本格的にはじまりました。
大学の日常になりました。
しかし、学生は、毎年新しく加わり卒業してきます。
新陳代謝をしているのです。
これが大学の一番の特徴です。
そして卒業生は社会へと羽ばたきます。
今は新入生と在学生に集中しています。
教職員の新陳代謝は少ないですが。

・海洋調査船・
海洋調査船「ちきゅう」は最新鋭のものです。
正式には、地球深部探査船というそうです。
実験室も完備されていて、
一流の研究装置、スタッフなど
充実した環境が整えられています。
残念ながら、私は「ちきゅう」には乗ったことがありません。
大学院時代に、別の調査船には1ヶ月ほど乗船したことがあります。
その間は、研究に没頭できますが、
生活のスケジュールはなかなかハードでした。
でも、乗船中は非常に充実した時間となります。
これは、今も変わらないことだと思います。
私は、今では地質研究の最先端からは引退していますので
もう乗れませんがね。


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