地球の仕組み

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Essay ■ 3_147 地下5kmのダイヤモンド 4:石油からも?
Letter■ 研究の醍醐味・晩秋に
Words ■ 北国は、秋が深まり、冬が目前です


(2015.11.19)
 火山岩中の捕獲岩から見つかったナノダイヤモンドは、小さく、量も少なく、工業的に利用できるものでもありません。しかし、今まで誰も知らなかった場所で見つかったことに、重要性があります。その意味を最後に考えましょう。


Essay■ 3_147 地下5kmのダイヤモンド 4:石油からも?

 今回発見されたダイヤモンドは、今までとは違う岩石で、違ったメカニズムで形成されました。ダイヤモンドを含んでいた岩石は、蛇紋岩で、マントルにあったカンラン岩が変質したものでした。蛇紋岩化作用と呼ばれるいくつもの化学変化が複合的に起こった岩石で、それらの化学変化に伴ってダイヤモンドが形成されました。できた条件は、ナノダイヤモンドのサイズなどから、300℃以下の温度で1000気圧以下の圧力だと見積もられています。これは、地下5kmほどのところに相当します。通常の地球内部でのダイヤモンドが形成される場所は、100kmより深いところです。今回発見されたナノダイヤモンドは、通常の形成場とは明らかに違う、特別なメカニズムできたことになります。それが化学気相成長というメカニズムであったということです。
 この報告から示してことは、単にひとつのことを発見した以上にいくつかの意義があります。そのひとつは、他の捕獲岩でも同じようなことが起こっている可能性がでてきたことです。捕獲岩では、蛇紋岩化作用は特別なものではなく、よく起こっている現象です。ということは、他の捕獲岩で同じようにナノダイヤモンドができているかもしれません。もしナノダイヤモンドが他のものから見つかったとすると、自然界では化学気相成長によってダイヤモンドができるということになります。
 そしてもし捕獲岩以外の蛇紋岩においても、一般的にダイヤモンドができているとすると、ダイヤモンドは地球深部の高温高圧条件だけがその起源ではなく、もっと広く存在する可能性を示すことになります。さらには、化学気相成長による他の鉱物もできる可能性もでてくることになります。
 著者らは、化学気相成長は、今回見つかったような鉱物の流体の反応だけでなく、有機物との反応でもできるのではないかと考えています。その候補として、有機物を含む堆積岩や石油の中でも起こるのではないかと指摘しています。非常に興味深い指摘です。
 今回の報告では、化学気相成長のダイヤモンドが、自然界のどこで形成されているかを推測して発見しました。あるかどうか分からないもを見つけるのは、なかなか大変です。ないと徒労に終わります。ないことの証明は不可能なので、研究をやめる潮時も見極めにくくなります。この報告のすばらしいところは、それをあえて成し遂げた点です。一旦発見されると、次からは、同じ手法を、別の地域の同じ蛇紋岩に、あるいは別の堆積岩や石油などに応用するだけです。パイオニア的研究は重要な意義があります。
 このような発見が続いたとすると、ダイヤモンドは、見えないが、もっと身近に存在するものだという認識ができるかもしれません。石油の中にダイヤモンドがあり、それが車を動かしている燃料に紛れていると考えると、なかなか素敵ですね。ちょっと先走りすぎでしょうか。


Letter■ 研究の醍醐味・晩秋に 

・研究の醍醐味・
本文でも述べましたが、
パイオニア的発見は重要な意義があります。
やっている研究者にとっては、
多数のアイディアの一つで
研究しているに過ぎないのかもしれませんが、
その論理的大変さはなかなかのものです。
もし予測通り見つからなかったら、
諦めるのか、続けるのか。
悩むところでしょう。
もし、簡単に見つかったということでは、
稀な現象ではなく、ありふれた現象だったのかもしれません。
となるパイオニア的で、重要な発見となります。
もし、たまたま運良く、
稀な現象を見つけてしまったとすると
2個目を探すのは、非常に苦労をすることになります。
そんな落とし穴がどこにあるかわかりません。
それは研究の醍醐味でもあるのでしょうが。

・晩秋に・
11月も半ばをすぎて、
木立の木々は葉をすべて
お落としてしまいました。
秋も終わり、冬にむかっています。
いつ雪が降っても不思議ではなありません。
そんな晩秋の青空は格別、感慨深いものです。
青空なのどことなく寂しさを感じるのは
私だけでしょうか。


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