地球の仕組み

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Essay ■ 3_143 マントル対流 6:負の浮力
Letter■ 新入生・今年の春は
Words ■ いよいよ春めいてきました


(2015.04.09)
 海洋プレートの沈み込みが、能動的か受動的かという論争を、シリーズで紹介しています。これまで能動説が主流でしたが、新説として受動説が最近唱えられました。主流派の反論として、受動説のの重要な根拠であるアセノスフェアが先に沈み込むという現象を、「負の浮力」だとして説明しています。不思議な言葉「負の浮力」の紹介を、マントル対流のシリーズの最後としましょう。


Essay■ 3_143 マントル対流 6:負の浮力

 海洋地殻は海嶺で形成された時は暖かく、海嶺下のマントル物質もマグマができるほど(1000℃以上)の高温です。これが地球内部の熱の上昇口となります。上昇「口」といいましたが、実際には「地点」ではなく「線状(直線とは限りません)」になっています。
 プレート直下のアセノスフェアという軟らかいマントルの上を海洋プレートが移動していきます。深海の海水温は数℃なので、海水に接している海洋地殻は冷めていき、海洋地殻の下のマントル物質も冷えていきます。これが地表における海洋プレートの冷却となります。その結果、海洋プレートの密度と厚さが増してきます。冷えて厚くなった海洋プレートは、やがて沈み込みます。これがマントル対流の下降口となります。
 海洋プレートが沈み込むという現象なのですが、問題は海洋プレートが能動的に沈み込むのか、受動的に沈み込むのかということでした。能動的とは、海洋プレートが密度が大きくなり自重のために沈み込みはじめることです。受動的とは、冷めたアセノスフェアが先に沈み込みマントル対流の下降流となり、それに引きずられて海洋プレートも一沈み込んでいくということです。
 小河さんは、プレートの沈み込みによって、沈降(能動的)で解放される重力エネルギーか、マントルの対流運動(受動)で解放されるものか、エネルギー量の比較をすれば答えがでると考えました。そして、地震波トモグラフィをみると、海洋プレートの沈み込みによる重力エネルギーの方が大きいと判断していました。
 小河さんは、論文で「アセノスフェアの方がプレートより速く動いていることを示唆する観測データもあるが(Kodaira et al., 2014)」として、小平さんたちの論文を紹介しています。似た結果をシミュレーションで得ている(Ogawa, 2014)といいます。同じ現象ですが、小河さんは違う解釈をしています。
 冷却は、時間とともに、海嶺からの距離とともに進みます。また、海嶺から海洋プレートが遠ざかると、その厚さも増していきます。その結果、冷めた海洋プレートの底は角度を持ち、斜面となっています。滑りやすい状態で底面が傾斜をもっていると、海洋プレートではなく冷やされたアセノスフェアが「負の浮力」を得るといいます。
 「浮力」とは周りの物質と比べて密度が小さくなり上昇することですが、「負の浮力」とは上昇ではなく、下降、沈む方向に動くことになります。つまり、海洋プレートに引きずられてアセノスフェアは受動的に滑り落ちることになります。
 一方、アセノスフェアを沈み込ませる原因となった海洋プレートは、沈み込まれる別のプレートからの摩擦や抵抗を受けます。その結果、沈み込もうとするスピードが減速され、アセノスフェアのほうが速いスピードになり引っ張っているようにみえます。小平さんたちの観測を、小河さんはこのような現象を見ているのだと主張しています。
 同じ現象をいろいろな手段で観測し、シミュレーションして、多様なデータを得ます。今では観測や実験の精度がよくなっているので、ほとんどデータには間違いはありません。ある現象が見つかれば、それはほぼ間違いはないものでしょう。しかし、その現象の解釈、考え方には違いあります。科学は人が営むものだからなのでしょう。
 マントル対流が起こっているのは確かです。しかし、下降流であるこの海洋プレートの沈み込み対する解釈は、今後どうなるかは、まだわかりません。しかし、興味を維持し続ければ、やがて知恵によって解決にたどり着けるはずです。そんな知恵に期待して、今後も注目していきたいと思います。


Letter■ 新入生・今年の春は 

・新入生・
大学では今週から新学期の授業がはじまりました。
新入生は、戸惑うことがあるとは思います。
すぐに馴染める社交的な学生。
素直に楽しんでいる学生。
内気なためなかなか馴染めない学生。
新しい環境、人間関係で、疲れている学生。
いろいろな学生がいます。
多くの場合は時間が解決してくれます。
新しい生活に少しずつでいいですから、
しかし着実に馴染んで行ってもらいたと思います。

・今年の春は・
今年の春は雪解けが早く、
我が家の車も夏タイヤにしました。
多分、この時期の交換は、
周り家々と比べて遅めだと思います。
でも4月上旬は、天気がよくても、
まだ朝夕は気温が低く、
特に風があるとゾクゾクとするほど寒く感じます。
私は、まだしばらくは冬物のネックウォーマーや
キャップ、手袋をつけて通勤しています。
温かければしまえばいいのですから。
年齢を経ると、自分の体調や防御をまず考えてしまいます。
まあ、仕方がないのでしょうね。


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