地球の仕組み

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Essay ■ 3_142 マントル対流 5:反論
Letter■ 入学式・原稿
Words ■ 北海道も春めいてきました


(2015.04.02)
 マントル対流が海洋プレートの沈み込みを受動的に起こすのか、それとも冷たい海洋プレートが自動的に沈み込むのか、争われています。受動的であるという新説に対して、従来の自動的説からの反論もあります。それを紹介していきましょう。


Essay■ 3_142 マントル対流 5:反論

 今までの定説を覆すような新しい考えが出てくると、当然多数派である定説を信じている人たちからは、反論が出てきます。もし新しい説があまりに荒唐無稽だったり、到底受けられないような考えなら、反論もされることなく無視されることもあります。
 今回の新説は、なかなか説得力のあるものです。ある地域、ある時代の特異な現象ではなく、普遍性があり、一般化できそうな説です。しかも、最新の観測による根拠やコンピュータ・シミュレーションのデータもあります。ですから、無視できるものではなく、それなりの説得力がある説となっています。
 このような説に対しては、反論が出てくるはず。私が目にしたものを、一つだけ紹介します。2015年2月25日発行の地学雑誌で、東大の小河正基さんが「地球型惑星内部物理学の最近の進展」という総説において、反論がなされています。ただし反論は、論文の最後に付録として「マントル対流の性質」を書いています。その中では、「いくつかの混乱がある」として論じています。いくつかの論点のひとつとして「プレート運動は能動的か受動的かという議論」で反論をしています。
 昔のシミュレーションでは、計算を簡便化するために仮想的にプレートが硬いものであるとされて計算されてきました。しかし、現在では、プレート内には、硬い板(リソスフェアといいます)として振る舞うところ(剛体)と、軟らかく振る舞う(可塑的)部分(アセノスフェア)があることがわかってきました。プレートの実態に基づいた、より精密なシミュレーションができるようになってきました。つまり、プレート運動が受動か能動かの判断ができるようになってきたというわけです。
 プレート運動が能動的か受動的かという問いは、プレートの沈み込みが、沈降で解放される(重力)エネルギーを使っているのか(能動的)、マントルの対流運動で解放される(重力)エネルギー(受動)によるものなのか、という問題に換言できます。海洋プレートの沈み込みよって、開放されるエネルギー量の比較をすれば、答えがでるということになります。
 答えは、地震波によるトモグラフィによって、出てくると、小河さんはいいます。地震波トモグラフィとは、コンピュータ断層撮影のことです。医療におけるコンピュータ断層撮影(CTスキャン)は、核磁気共鳴やガンマー線などで体内をみるものですが、地震波トモグラフィは地震波を利用して地球内部を「みる」ものです。地震波速度の変化は、マントル物質の密度や温度の違いを意味しています。物質の性質を仮定すれば、温度分布を知ることができるという手法です。地震波トモグラフィによって、マントル内の正確な熱の分布がわかるようになってきました。
 小河さんによると、地震波トモグラフィをみると、「スラブの解放する重力エネルギーの方が遥かに大きいのはほとんど自明である」としています。この辺りの議論は、専門的で私も十分勉強していませんので判断できません。
 実は、小河さんも、小平さんたちと同じようなデータを得ていますが、別の説明をしてます。それは次回としましょう。


Letter■ 入学式・原稿 

・入学式・
いよいよ大学では入学式がありました。
新入生を前に挨拶をすることになりました。
少々おこがましいのですが、
仕方がありません。
組織の陣容や年齢構成からいえば仕方がないのですが、
私は管理やマネージメントをするのは苦手です。
大雑把でありながら、気になるタイプなので、
仕事に振り回されそうになります。
ですから、優先順位でいうと研究、教育、校務
としたいのですが、
仕方がありませんので、
引き受けています。
うまくストレスを解消しないといけませんね。

・原稿・
4月になると新学期がはじまります。
何年たっても、最初の講義には緊張します。
ところが、新入生への挨拶に対して、
それほど緊張していません。
なぜかは、わかりません。
なるようにしかならないので、
開き直って準備をするだでけです。
私の場合は、原稿を書いています。
それを見ながら話すしかありません。
うちの学長は原稿を読むことなく挨拶をします。
素晴らしいです。
しかし、現在の大学には聴覚障害の人もいるので、
文字で表示するというシステムがあるので
そのため、事前に原稿を用意しなければならない
といってました。
まあ、立場上いろいろあるようです。


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