地球の仕組み

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Essay ■ 3_138 マントル対流 1:最新情報
Letter■ 決着は・三寒四温
Words ■ 入試のシーズンでもあり卒業シーズンでもあります


(2015.03.05)
 ここ最近、プレート移動の駆動力というマントル対流の本質にかかわることで、大きな議論が起こっています。それをいくつか紹介します。前回に続いて、今回も「地球の仕組み」でのシリーズとなりますが、最新の話題なのでご了承ください。


Essay■ 3_138 マントル対流 1:最新情報

 前回まで、5回のシリーズで「プレートはなぜ動くのか」を紹介してきました。小平さんたちの北西太平洋での広域の調査にもどついた結果によれば、いくつかの重要な観察事実に基づき、マントルが海洋地殻を引っ張っているという結論を導き出しました。
 その結論は、今までの「定説」に反するものでした。この説は、一つの報告から出された仮説で、まだ少数派の意見でした。
 ところが、先日(2015年2月12日)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の吉田晶樹さんと浜野洋三さんが、イギリスの科学誌「Scientific Reports」(電子版)に論文を発表されました。マントル対流を計算機シミュレーションによって解いた研究が報告されました。この論文は、小平さんたちの仮説、つまり少数派意見を支持する結果となりました。
 それで話が終われば、一種のパラダイム転換が起こりつつあるように見えるのですが、実はそう簡単にはいかないようです。
 東京大学の小河正基さんが、2015年2月25日発行の「地学雑誌」の総説で反論をだされました。総説(レヴュー、reviewとも呼ばれる)とは、これまで研究を総括的にまとめた論文です。網羅的にこれまでの研究をまとめたものですから、現状の定説にいたる考えが整理されており、多くの研究者に非常に役立つ論文となります。余談ですが、かつて総説はその分野の大御所が書くことが多かったのですが、最近では問題意識をもった若手や中堅クラスの研究者が書くことも多くなりました。基本的に総説は、新しいデータを出して議論するものではく、今までの研究動向を整理するものです。
 小河さんは、地球型惑星の内部構造に関する研究動向をまとめました、そして、論文の一番最後に、わざわざ付録をつけて「マントル対流の性質」として、プレート運動を含むマントル対流についての混乱があるとして、議論されています。その中で小平さんたちの考えに対して反論をされています。もちろん、総説ですから、一般論化されての反論ですが。
 これから、数回のシリーズとして、まずはプレートの運動、特に海洋プレートの沈み込み機構について再度整理し、次に吉田・浜田の論文を紹介し、小河さんの反論も紹介していきたいと思っています。詳細は、次回からとなります。


Letter■ 決着は・三寒四温 

・決着は・
学問は議論が重要です。
ただし、議論は決着を見る場合と、見ない場合があります。
決着を見る場合は、
正解が見つかる問題が一番わかりやすのですが、
自然科学ではそのような場合は多いわけではありません。
特に地球や自然現象を相手にしている場合は、
結論は出にくい場合が多いです。
それは、背景に、長い時間、大きな対象、
近似値による理論化などがあるためでしょう。
ほかに決着を見る場合もあります。
たとえば、一方が負けを認めた場合、
折衷案があった場合、
両方ともありえると結論できた場合、
すべてを包括できるより広い仮説が出てきた場合
などです。
決着を見ない場合は、時間がたてば、
趨勢がどちらからにいくことになります。
今回は、まだ議論が始まったばかりなので
今後の動向が気になるところです。

・三寒四温・
3月になりました。
北海道は、寒い日、暖かい日が繰り返しています。
三寒四温に入ったのでしょうか。
大学は、今も入試の最中です。
今週末から来週にかけて校務出張が入ります。
今度は青森です。
天気が心配ですが、
こればかりは、今から心配しても仕方がないですね。


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