地球の仕組み

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Essay ■ 3_135 プレートはなぜ動くのか 3:イザナギ
Letter■ 矛盾・伊邪那岐命
Words ■ 温暖と冷え込みがアイスバーンをつくりました


(2015.02.12)
 太平洋プレートが沈み込みの場である日本列島の海溝付近には、海嶺が沈み込んでいったことがわかってきました。沈み込んだ海嶺は、今では全く見えません。どうして今は亡き海嶺の存在がわかるのでしょうか。実は、単純な検証で判定することができるのです。


Essay■ 3_135 プレートはなぜ動くのか 3:イザナギ

 今回の調査は、海洋研究開発機構の小平秀一さんたちの研究グループが、北海道の南東海域でおこなったものです。北海道から100〜700km離れた海洋域で、海洋プレートの地質構造を詳しく調べました。その成果は2014年3月に報告されました。その成果に基づいて紹介します。
 調査された海洋プレートは、太平洋プレートになります。海洋プレートは中央海嶺で形成されます。ところがこの海域の太平洋プレートは、少々変わった履歴を持っています。海洋プレートを形成した中央海嶺が、すでに海溝に沈み込んでしまっていて、今はないと考えられているのです。
 なぜ、そのようなことが、わかるのでしょうか。海底の形成年代を調べることでわかるのです。
 海底は海嶺で形成されます。海嶺で形成され、ある時間、海底を移動した後に海溝へ沈み込みます。海嶺で新しい海洋プレートが次々と形成されるので、海嶺から両側に離れるほど古くなってきます。一方、海溝は海洋プレートが沈み込むところで、時代の古いものから順に沈み込んでいきます。
 ところがこの地域の海洋底は、海溝から離れるにしたがって古くなっています。海溝に近い海底が新しくでき、離れると古いものになるという、通常とは逆の形成年代になっています。海溝に近いほど形成年代が若いという不思議な配列は、海嶺が海溝に沈み込んだと考えれば解決できます。
 海溝の先に、沈み込んだ海洋プレートを追いかけていけば、海嶺にたどり着くはずです。海嶺のもっと先には、現在の太平洋プレートに反対側に広がった、もうひとつの海洋プレートにいき着くはずはずです。その海洋プレートには、名称がつけられており「イザナギプレート」と呼ばれています。イザナギプレートは、1億2000万年前には存在していて、約2500万?前には?み込んでなくなったと考えられています。
 一般に海溝へは古い海洋プレートから順次沈み込み、その沈み込みの力が海洋プレート全体を引っ張ることがプレート駆動の原動力であるというモデルでした。しかし、この地域では、そのモデルが成り立たないことが、今回の調査でわかってきました。
 この調査の結果、2つの重要な特徴が見つかってきました。ひとつは海洋地殻の下部に2.5kmほどの間隔でいくつもの割れ目があること、2つ目は断層の真下のマントルでは地震波の速度が方向によって違いがあること(地震波伝搬速度の方位異方性と呼ばれています)がわかりました。
 この2つの特徴が、どのような意味をもつのかは、なかなか難しい話になりますが、詳しくは次回としましょう。


Letter■ 矛盾・伊邪那岐命 

・矛盾・
今回の地域は、単純に海洋プレートの年代を調べていくと
海溝が一番古い年代になるはずのところが
新しくなっているというところでした。
海嶺が沈み込んだとすれば、
簡単に理解できると思えますが、
それに気づくまでは悩ましい矛盾に
見えたにちがいありません。

・伊邪那岐命・
イザナギプレートの「イザナギ」は、
古事記や日本書紀にでてくる神の一人で
伊邪那岐命(古事記での標記)あるいは
伊弉諾神(日本書紀)に由来しています。
イザナギプレートは、日本列島において、
中央構造線を形成させたり、
西日本や北海道の本質的な構造にも大きな影響を与え
古い日本の骨格を形成した運動を引き起こした
プレートであります。
その意味を込めて、命名されました。


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