地球の仕組み

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Essay ■ 3_112 下部マントル 4:二層対流へ
Letter■ 快晴の青空・後追いの思い張
Words ■ 傍目で本流を見るのは、面白い


(2012.06.28)
  下部マントルが始原的隕石の成分に似ているということは、地球ができてからほとんど変化することなく、現在に至ったことになります。一方、上部マントルは、固有の進化を遂げたことになります。この結果は、地球の歴史を書き換えることになるかもしれません。一つの論文が、主流派に大きな変更を迫ることがあります。今回の結果もそのような役割を果たすかも知れません。


Essay■ 3_112 下部マントル 4:二層対流へ

 上部マントルと下部マントルは、地震波の観察で物性に違いのあることがわかっていました。その違いは、結晶構造の違いとするか、成分が違いとするか、の2つの考えありました。趨勢は、成分は一緒で、結晶構造の違いではないかという考えでした。今回、村上元彦さんたちは、成分の違いだという実験結果を報告しました。
  下部マントルは、上部マントルとケイ素の多い点で違っていました。下部マントルは、太陽系の初期にできた隕石がもっていた組成に近いまま、現在に至っていることがわかってきました。一方、上部マントルは、もともとの隕石の成分から、ケイ素が少なくなっているということです。
  上部マントルのケイ素分は、一部は大陸地殻にいったと考えられます。プレートの運動によって、列島では火山活動が起こり、大陸地殻と同じような成分のマグマができ、噴出します。複雑な過程を経ますが、結果として、マグマは、上部マントルからケイ素の多い成分として取り除かれていくことになります。いったんできた大陸地殻は、密度が小さいので、すがた形が変わっても、地表にあり続けます。そのケイ素の分が、大陸地殻と地表に保存されることになります。40億年以上わたって、大陸地殻はつくり続けられています。その結果、ケイ素成分は、上部マントルから抜かれたことになります。
  この説には、問題がいくつかあります。
  まず、上部マントルのケイ素の不足分は、大陸地殻だけでは、足りないようです。上部マントルは、地殻に比べると、圧倒的に体積も質量も多いためです。ですから、不足のケイ素の一部は、地殻だけでなく、外核(とけた鉄でできています)に溶け込んでいるかもしれません。しかし、下部マントルをジャンプしてケイ素だけを運ぶのは可能でしょうか。まだ、十分検証されていないところです。
  次に、マントル対流の問題です。地震波トモグラフィの結果から、従来は、上部と下部マントルを通じて対流している(一層対流)ようにみなされていました。もし今回の結果と推定が正しければ、上下のマントルで対流が別々になっている(二層対流)可能性が強くなります。あるいは一層対流であっても、特別なメカニズムを考えなければなりません。
  もし、上下のマントルが、遷移帯を境にして、混じることがなく二層対流を続けてきたとしたら、長い時間別々の進化をしてきたことになります。これを採用すれば、従来の地球の進化シナリオを書き換える必要がでてきます。面白くなってきました。
  今までの定説が覆ることは、積み上げてきたものが、崩れていくことになります。新しい枠組みのもとで、新しい説が構築されていくことになります。その前に、いろいろな検証が必要となるでしょうが、もし今回の一つの論文によって大きな変化が起こることは、なかなか刺激的です。


Letter■ 快晴の青空・後追いの思い 

・快晴の青空・
北海道はいい気候になって来ました。
例年より涼しいような気がします。
前期の講義も3分の2が終わりました。
近隣の大学では大学祭も終わりました。
初夏の陽気になってきました。
早朝、快晴の青空は
何事にも代えがたいよさがあります。
天候不順でしょうか、残念ながら、
そんな日が今年は少ないようですが。

・後追いの思い・
今年は、なんだか息絶え絶えとなっています。
仕事が重なっているので、
余計に辛いのかも知れませんが、
不況や時代のせいでしょうか。
いろいろなところで一杯一杯の状態で
働いている人が多数いるようです。
我が組織にも、重要なポストについている人で
そんな状態の人が何人かいるようです。
もし倒れれば、組織の犠牲となります。
辛いのなら、そこまで耐えずに
早目に仕事を降りればよかったのにと
多くの人が思ってしまいます。
後追いでのそんな思いは役に立ちませんが。


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