地球の仕組み

戻る


Essay ■ 3_106 海台 3:オントンジャワ
Letter■ 白金族・疑問
Words ■ 暖かかったり、寒かったり変動の激しい気候です


(2012.05.17)
  私たちが日ごろ目にしている火山と比べると、オントンジャワ海台を生み出した火山は、あまりに巨大でした。そんな巨大な火山であるがゆえの隕石説の登場でした。隕石の衝突によって、大きな火山が発生した例もあります。では、超弩級の火山の原因は、なにでしょうか。


Essay■ 3_106 海台 3:オントンジャワ

 オントンジャワ海台は火山によってできたことは、岩石の採取から明らかになりました。そのような巨大な火山の原因が、隕石(地球外説)か、熱いマントル上昇流(地球内説)かが、問題になっていることを前回紹介しました。2012年2月16日の科学雑誌(Scientific Reports)に、フィリピン大学のTejada1さん、ハワイ大学のRavizzaとPaquayさん、そして海洋研究開発機構の鈴木勝彦さんが共同で、その起源に決着をつける論文を報告しました。その論文に基づいて説明していきましょう。
  隕石由来かマントル由来かの違いは、化学組成から判別できます。K-T境界の恐竜絶滅の原因が、隕石であるときに利用されたのもこの方法でした。
  隕石には白金族の元素(周期律表で白金の近くにある元素群)の濃度が大きいことが知られています。その濃度をオントンジャワ海台の岩石で調べればいいことになります。
  ただし鈴木さんたちは、少々複雑な手順で調べています。オントンジャワ海台の火山活動をしていた時期に、火山活動によって海に白金族元素が広がっていることを、以前おこなった研究で突き止めています。そこで、火山活動の同時代に海底にたまっていた堆積物(イタリア中央のゴルゴアセルバラというところ)を用いて、白金族の元素を分析をしました。
  その結果、白金族元素の割合が、隕石のものとは全く違うもので、マントルから由来したマグマによってできたことがわかりました。そして、隕石説を否定できたとしています。
  鈴木さんたちは、今までの研究の成果も加えて、オントンジャワ海台の形成過程とその影響を調べました。火山は、2回活発な活動をしていることがわかっています。両者の火山活動は、噴出物の量の多さから、地球史上最大規模の火山活動ではないかと考えられているものです。
  一度目の活動(1億2460万年前)で、大気中に二酸化炭素が大量に加わり、急速な温室効果がスタートしました。活動の終わる頃には、前回紹介しました「海洋無酸素事変」が起こります。その後、二度目の活動(1億2420万年前)が始まります。二度目の火山活動は、一度目よりは激しいものでした。はじまったばかりの海洋無酸素事変も、二度目の火山活動が起こったことで、継続します。無酸素事変の期間は、約100万年間に及びました。その結果、前回紹介した放散虫の大絶滅が起こったと考えられています。
  白亜紀末(K-T境界)の隕石衝突の事件では、大規模な絶滅が起こったことは有名です。今回の研究で、大規模な火山活動でも、大絶滅が起こることが明らかになりました。地球の大異変は、環境に大きな変化を与え、その変化が急激であれば、生物は適応できずに滅びてしまいます。そんなことを今回の研究は、示しているのでしょう。


Letter■ 全原発停止・遅めの春 

・白金族・
白金族とは、
ルテニウム:原子番号44 Ru
ロジウム:原子番号45 Rh
パラジウム:原子番号46 Pd
オスミウム:原子番号76 Os
イリジウム:原子番号77 Ir
白金:原子番号78 Pt
の総称です。
いずれも地殻には少ない元素で、
多くは核(コア)にあると考えられています。
隕石では、元素の分離(正確には分化といいます)が
おこっていないので、
白金族の濃度も比較的高くなっていることがわかっています。
白金族の農集を、根拠に
K-T境界で隕石の衝突があったことが証明されました。
今回は、白金族の農集がないことが
隕石の衝突を否定ました。
面白いものです。

・疑問・
今回の論文において、なぜ、
オントンジャワ海台の火山岩や
その直上の堆積物を調べないのか
という疑問が生じます。
その答えは、隕石の衝突によって
マグマが形成されたとしても、
マグマ自体は多くはマントルが溶けたものとなります。
ですからマグマの中に隕石の痕跡がないからといって
隕石を否定したことにはなりません。
また、海台直上の堆積物は、
火山活動の終了後に堆積したものなので、
隕石の痕跡が残っていない可能性があります。
ですから、確実に隕石の痕跡を捉えるには、
少々離れてるかも知れませんが、
同時期に堆積したものを
試料にしたほうがいいことになります。
でも、あまりに離れているのは
少々気になりますが。


戻る