地球の仕組み

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Essay ■ 3_87 SPring-8:マントル5
Letter■ 日々精進・反面教師
Words ■ 新天地は大変だけれど刺激的


(2010.04.08)
  マントルの様子を、直接見ることは不可能です。しかし、マントルの条件を、実験室で再現していけば、間接的ですが、マントルを垣間見ることはできます。さらに、SPring-8を利用すれば、マントルの条件のままで、覗くことも可能なのです。


Essay■ 3_87 SPring-8:マントル5

 温かいマントル物質が上昇していくものをホットプルーム(正式にはスーパーホットプルームと命名されています)と呼び、冷たいプレートが沈み込んで落ちていくマントルの流れをコールドプルーム(こちはスーパーはつきません)と呼んでいます。これらのプルームが、なぜ、670km付近で留まるのでしょうか。それには、マントルの構造と鉱物学的な理由があります。
  地球内部は深さとともに、温度と圧力が上昇していきます。鉱物は、温度や圧力が増すと、よりコンパクトになるために結晶構造を変化させて、高密度の結晶になっていきます。そのような変化を、結晶の相転移と呼びます。
  マントル物質はカンラン岩と呼ばれるもので、地上で見られるカンラン岩は、カンラン石や輝石を主として、長石などを少し含んでいます。カンラン岩を構成する鉱物は、結晶ごとに相転移の温度圧力条件が変わります。相転移は、深度400kmあたりから起こり始めて、670kmあたりまでで終了します。カンラン岩を構成する結晶の相転移がおこっているのゾーンを、マントル遷移層と呼んでいます。
  このような遷移層は地震波でもみえているため、地震波から物質の密度が推定されるのですが、その密度を満たすものはどのような物質であるかが、いろいろ推定され、議論されてきました。
  マントルのカンラン岩は、一様ではなく、上部マントルと遷移層、下部マントルでは、化学組成が違うのではなかという説もあります。それは、密度を満たすために推定した物質は、結晶の組み合わせによっていくつかの考え方ができたためです。
  たとえば、カンラン石の多いカンラン岩(パイロライト、pyrolite)という説と、柘榴石(ガーネットの高温高圧タイプのメージャライト)の成分が多い岩石(ピクロライト、piclogite)という説もあり、決着をみていませんでした。
  そのような疑問に対して、愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの入舩徹男さんたちと高輝度光研究センターの肥後祐司たちのグループが、高温高圧発生装置とSPring-8を使って調べました(Nature 2008.2.14)。SPring-8は、高温高圧装置が作動中でも、その中を通り抜けていけるほどの強力なX線を発生することできます。SPring-8を用いれば、高温高圧をかけた状態の結晶を観察することできます。つまり、高温高圧発生装置が再現しているマントルの条件で物質がどのような状態にあるかを測定できるのです。
  以前の高温高圧発生装置を用いた実験では、物質を高温高圧状態にしたのち、常温常圧にもどして、その物質の性質を調べていました。ですから、本当の高温高圧状態でその物質の性質が信頼できるのかという不安がありました。また、測定できない物性もありました。それを入舩さんたちのグループが、SPring-8を用いて解決していたのです。
  その成果については、次回紹介しましょう。


Letter■ 日々精進・反面教師 

・日々精進・
四国に引っ越してきて1週間ほどが過ぎました。
やっとインターネットも開通できました。
メールの受信は大学のメールサーバからもできたのですが、
送信だけはいろいろ試したのですが、できませんでした。
データ通信の契約しているプロバーダー経由なので、
そこからの送信がうまくいかないようです。
仕方がないので、以前からメールの保存用に利用していた
WEBメールのGmailを利用して送信するようにしました。
送信と受信が別々なので少々わずらわしいのですが、
しかたがありません。
新生活は、わくわくして、今までできなかったことをはじめたり、
これからやっていきたいことに胸がわくわくしています。
でも、やはり重要なことは、
せっかくもらった時間を有効に利用して、
成果を上げることだと思っています。
そのためには、日々精進しかないですね。
これは、いつもの生活での心がけと同じですね。

・反面教師・
今回紹介した研究の中心人物である入舩さんは、
大学院時代の先輩でした。
当時、寡黙ですが淡々と仕事を進めていく、
非常に頭のきれる人でした。
そして必要とあらば新しい世界に思い切りよく飛びこみ
新しい道具などもすぐに取り入れられる能力もありました。
彼に比べると、自分の才能のなさを痛感したものです。
私も負けずに何度か新天地に飛び出しました。
その後も、自分なりに地道な調査をしたり、
人があまり考えない視点で
しつこく喰らいつくような研究を目指していきました。
入舩さんは、私にとっていい意味での
反面教師だったのかもしれませんね。
そして今回の新天地でも研究を進めたいと考えています。


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