地球の仕組み

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Essay ■ 3_64 PETM 2:原因
Letter■ 大陸配置・雪庇
Words ■ 全国的な大雪、お見舞い申し上げます


(2008.02.21)
  PETMと呼ばれるイベントは、なぜ起こったのでしょうか。その原因は、どうも海と大陸の配置、そして火山活動、海流や気候変動など複雑だったようです。


Essay■ 3_64 PETM 2:原因

 PETM(Paleocene-Eocene Thermal Maximum)とは、暁新世−始新世境界温暖化極大イベントと呼ばれ、今から約5500万年前に起こった急激な地球温暖化事件のことです。それを呼応したように暁新世−始新世の時代境界では、大絶滅が起こっています。PETMがどのようにして起こったのかは、興味があるところです。現在、多くの科学者が、研究しているホットな話題となっています。
  PETMは、1990年に海洋学者のケネット(J. Kennett)とストット(L. Stott)の論文がきっかけになりました。彼らは、海底の堆積物の分析から、北極海では始新世の始まりに、海水面だけでなく海水温全体が突然高くなり、深海では酸欠になり絶滅が起こったと考えました。その報告をきっかけに、北極海の異変が全地球的な絶滅を起こした、という説を唱える研究者が何人もでてきました。もしこれが本当なら、PETMは北極海周辺の局地的な現象ではなく、全地球的な大事件になるわけです。問題は、PETMが、なぜ起こったのかです。
  PETMが起こった5500万年前ころは、現在の大陸配置とはだいぶ違っていました。研究者によって過去の大陸配置の復元は、その詳細においてはいろいろ違いがありますが、あらすじは一致しています。
  PETMの前後に、インドがユーラシア大陸に衝突しました。その影響で、ヒマラヤ山脈ができ、世界各地で火山活動が活発化しました。また、すでに開きはじめていた大西洋は、さらに開きはじめます。
  多くの研究者は、この時期に、大陸の衝突の影響で各地で火山活動が活発化し、大陸と海洋の配置が変化したことで海流にも大きな変化が起こし、気候変動へとつながったと考えています。
  PETMのころの北極海は、今よりも閉ざされた、いくつかの海峡で外洋とつながっている海でした。ヨーロッパとアジアの間には、広い海峡(ツルゲイ海峡:Turgay Strait)があり、別々の大陸となっていました。その海峡は、北極海と、当時はまだ広かったテチス海(後に閉じてきて地中海になります)をつないでいました。グリーンランド−北アメリカ大陸間とグリーンランド−ヨーロッパ大陸間は、くっついていたか、あるいは細い海峡しかありませんでした(復元は人によって違います)。いずれにしても、北極海は、今よりもっと閉ざされた内湾の環境だったようです。
  その後、グリーンランドの東側にあった大西洋の中央海嶺と、西のバフィン湾周辺での火山活動が活発になります。その結果、グリーンランドは、北米大陸やヨーロッパ大陸と完全に分裂していきます。その分裂時に起こった火山活動で、大量の溶岩が噴出した直後に、PETMが起りました。
  このように時系列に並べた地質現象をみていくと、誰もが、大規模な火山活動とPETMの関係づけたシナリオを考えたくなります。多くの科学者も、それぞれが得た証拠をもとに、いろいろな仮説を出してきました。火山活動によって直接二酸化炭素の放出を考える説、海嶺のマグマが海底の堆積物に含まれていた二酸化炭素やメタンの放出をさせた説、海底に大量にあったメタンハイドレートが一気にメタンとして放出される説などがあります。
  現在のところ、PETMのシナリオは、まだ確定していません。大気中に大量のガス(いわゆる温暖化ガス)が放出され、温暖化が起こるというシナリオが共通しているようです。その急激な環境変化が引き金となって、大絶滅が起きたようです。では、PETMの結果、次の異変が起こりました、その話は次回にしましょう。


Letter■ 大陸配置・雪庇

・大陸配置・
PETMのころの大陸配置の復元は、
http://www.scotese.com/newpage9.htm
http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Early_Eocene_Arctic_basin.PNG
などがあります。
両者をよく見ると、結構違いが目に付きます。
データがないあるいは少ない時代や地域では、
研究者独自の考えで大陸配置をしなければなりません。
大陸配置は、新たな研究成果が出れば変わることがあります。
たとえば、時代決定が正確になれば、今まで同時期だとされたものが、
実は違う時代の事件になることも起こります。
あらすじはあまり変わらないようです。
なぜなら、あらすじとは、基礎的なデータに基づいて
大陸配置が復元されているためです。
これからも、研究が進めば、より詳しい復元がなされていくでしょう。
もしかすると、決定的な新事実が見つかれば、
新しいあらすじも生まれるかもしれませんね。

・雪庇・
先週は爆弾低気圧のために、全国的に雪模様になったようです。
北海道は、数日で大量の降雪となりました。
雪かきがどこの家庭でも苦労しています。
我が家でも、雪庇がせり出してきたので、
業者に頼んで、雪下ろしてもらいました。
一人の人が2時間ほどで終わらせてくれました。
我が家は雪庇の落下で以前ガレージのシャッターを
破損したことがあります。
もし下に人がいた大事になっていました。
今度の冬に備えて、雪が解けたら、
屋根に雪庇よけの工事をしようかと考えています。


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