地球の仕組み

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Essay ■ 3_55 ストロマトライト:思い出の石ころ4
Letter■ 地球の時間・日常と快楽
Words ■ 遅い春が終わろうとしている


(2007.05.24)
  私の研究室のロッカーには、板状で縞模様のある石があります。分析装置にかけるために、板状に薄くして、磨いたものです。この石はストロマトライトと呼ばれています。この石にまつわる話をしましょう。


Essay■ 3_55 ストロマトライト:思い出の石ころ4

 もうずいぶん前のことになります。1990年夏、私はカナダに調査に行きました。その一番の目的は、博物館の依頼を受けてストロマトライトの採取することでした。当時私は、博物館に勤務する前で、大学の研究所にいました。
  7月15日〜8月14日までの長期にわたる調査ですので、私には、別の目的もいくつかありました。しかし、一番の目的は、ストロマトライトと呼ばれる石を博物館に展示するために、大量に採取することでした。
  そもそもストロマトライトとは、どんな石なんでしょうか。私が訪れたカナダのグレートスレイブ湖畔では、ストロマトライト自身が、厚い層をなして、延々と連続していました。ですから、ここにはストロマトライトが、地層として大量にあることになります。
  湖畔の岸では、ストロマトライトの上がよく見える場所があります。そこで見ると、直径40〜50センチメートルもあるような丸い形をしたものがぎっしりと集まって面をつくっています。その丸いものの断面が見えるところでは、同心円状のつくりをもつマッシュルーム上の形をしたものであることがわかります。マッシュルームごとの隙間も、石の小さな破片でうめられて、全体が地層となっているのです。非常に不思議な石です。
  ストロマトライトは、英語ではstromatoliteとつづります。1908年にカルコウスキーが名づけた石だとされています。stromatoliteのstromaあるいはstromatは、ラテン語のベッドカバーを意味するものです。そして英語の岩石名につく接尾語のliteをつけたものです。丸いベットカバーのような石という意味でしょうか。
  ストロマトライトは、20世紀にはじめて見つかったわけではなく、古くからこの不思議な石の存在は知られていました。1883年にはホールという地質学者が「クリプトゾーン」と名付けています。
  ストロマトライトは、炭酸塩からできている石です。20億年前ほどの地層から見つかります。その量は大量で、世界各地の同時代の地層から見つかっています。このことから、20億年前ころに大量に形成された堆積岩に一種であることまではわかるのですが、その不思議な石がどうしてきたのか、なにものなのかはわかりませんでした。
  ところが、1960年ごろに、西オーストラリアのシャーク湾のハメリンプールという入り江で、現在も生きているストロマトライトが発見されました。ハメリンプールに、ストロマトライトがあることは、地元の人は知っていたのはずなのですが、この奇妙なマッシュルームのようなものものが、20億年前の地層から見つかるストロマトライトであことに地質学者が気づいたのが1960年代になってからでした。
  その発見によって、20億年前のストロマトライトについて重要なことわかりました。マッシュルームの表面には、シアノバクテリアが群生しています。そのシアノバクテリア自身が、このマッシュルームをつくっているのです。そして、そのシアノバクテリアは光合成をする生物であることです。
  大量のストロマトライトが地層になっているということは、盛んに酸素が形成されたということです。ストロマトライト形成時に酸素が形成されました。それ以前は大量の光合成生物はいませんので、20億年前より以前は地球には酸素がないことになります。20億年前より以降は、光合成生物は進化して、酸素が継続的に形成されてきたことになります。
  ストロマトライトは、地球の酸素形成の歴史を物語る重要な石なのです。


Letter■ 地球の時間・日常と快楽

・地球の時間・
ストロマトライトを採取する時は、
博物館の以来を受けて調査チームとして参加しました。
その時、私はある大学の研究所で研究していました。
しかし、その翌年にその博物館に職を移すことになりました。
不思議な縁を感じました。
現在私がもっている資料は、
私が博物館にいたときに、
ストロマトライトのことをより詳しく知るために、
分析に用いたものです。
博物館には大型のストロマトライトの標本があります。
それはマッシュルーム数個分の大きさがあります。
きれいに磨かれた断面のストロマトライトに触れると、
地球の時の流れの雄大を感じます。
もちろん私の小さいの標本からも
地球の悠久の時間を感じることができます。

・日常と快楽・
北海道でも、桜もツツジも終わり、
いよいよ春が深まってきました。
タンポポがいたるところに咲いています。
半袖のTシャツ姿の学生たちを、何人も見かけます。
私もやっとコートを脱ぎました。
ゴールデンウィークがあけると大学も落ち着いてきます。
祝日も7月までなく、講義が順調に進みます。
単調な日々ですが、これが大学の日常です。
でも、多くの人は、変化を求めます。
いや変化というより、快楽のいったほうがいいかもしれません。
北海道は、これからいろいろな祭りがはじまります。
祭りの快楽にあまり気を取られないようにしなければなりませんね。


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