地球の仕組み

戻る


Essay ■ 3_46 マントルの水2:マントルの中身
Letter■ マントルの水・アポイ岳
Words ■ やはり夏は太陽の日差し降り注ぐ暑い日がいい


(2006.08.03)
 前回は、地球の構造の概略をみました。今回は、その中のマントルの中身を、もう少し詳しく見ていきましょう。


Essay 3_46 マントルの水2:マントルの中身 

 マントルは、カンラン岩からできていることは、前回紹介しました。マントルは、地球内部で非常に広い範囲(50〜2900km)を占めています。地球では、深くなればなるほど、温度や圧力も上がります。マントルの一番深いところでは、温度は1700℃、圧力は140GPa(140万気圧)にもなります。
 地球内部の様子は、地震波で探られています。マントルの中に、地震波の速度に変化が起こっているのが知られています。深度200kmあたりで地震波の速度が遅くなるところ(低速度層と呼ばれています)と、深度400〜670kmあたりで地震波の速度が変化するところ(漸移層、あるいは遷移層と呼ばれています)が見つかっています。400kmより浅いところを上部マントル、670kmより深いところを下部マントルと区分して呼んでいます。
 深度200kmあたりの地震波が遅くなる低速度層は、マントルのカンラン岩が少し溶けている状態になっていると考えています。岩石が少し溶けていると、岩石は変形しやすい状態となります。その層より上の部分は硬い変形しない岩石です。硬い岩石は塊あるいは板として振舞いますが、溶けているところでは、変形してすべりやすくなります。低速度層より上の硬い岩石の部分が、板として、すべって動くことができます。これが、プレートテクトニクスのプレートに相当する部分だと考えられています。硬い部分をリソスフェア、溶けている部分をアセノスフェアと呼ぶことがあります。
 深度400〜670kmあたりの遷移層では、違う変化が起きます。400kmで急激に地震波速度が速くなり、400kmから670kmでは地震波速度が増えていきます。また670kmでも地震波速度は急に早くなります。圧力の条件で見れば、400kmあたりでは13GPa、670kmあたりでは24GPaになります。低速度層は、プレートテクトニクスの重要な役割を担っています。
 下部マントルのような深部の岩石を手に入れることはできません。ですから実験室で高温高圧条件を生み出して、どのような結晶がありそうかを探る方法がとられています。実験でえられた結果を、地震波速度からえられた密度の情報と照らし合わせて、実験結果で推定された結晶が、深部の鉱物としてふさわしいかどうかが検討されます。そのような検討の結果、深部の岩石の様子もわかってきました。
 カンラン岩を構成している鉱物は、深さ共に温度や圧力が上がると、より密度の大きい、詰まった構造の結晶へと変化していくことが知られています。
 カンラン岩の構成鉱物で一番多いカンラン石は、13GPaでスピネル構造(β相)、17GPaで別のスピネル構造(γ相)、そして23GPaではペロブスカイト構造と岩塩構造の鉱物になります。
 次に多い輝石は、12GPaから16GPaでザクロ石へ、16GPaでメージャライトとよばれる結晶に変わり、22GPaより深くなるとイルメナイ構造やザクロ石構造などいろいろ変化しながら、最終的に26GPaより高い圧力では、ペロブスカイト構造をもつ結晶になります。
 670kmより深部の下部マントルでは、ペロブスカイト構造や岩塩構造をもついく種類かの結晶によって構成されることになります。
 このような地球深部のペロブスカイト構造や岩塩構造をもつ結晶は高密度です。H2Oのような物質が結晶の中に入る余地がありません。ですから、多くの研究者は、マントルには水などないと考えていたのです。しかし、遷移層の中に水がありうるということが、実験からわかったのです。続きは次回です。


Letter マントルの水・アポイ岳

・マントルの水・
マントルの水は、いろいろ重要な意味があります。
あるかもしれないないということは可能で、
後で紹介する事件からも
マントルには水がたくさんあるのではないかと
考えられていました。
しかし、肝心のマントルのどこに
水がありうるのかが分かっていませんでした。
ですから、今回の発見は重要な意味を持ちます。
それは、このマントルの水シリーズの後半でのお楽しみです。
もう少しこのシリーズが続きます。

・アポイ岳・
大学は定期試験も終わり、夏休みとなりました。
北海道は夏らしい天気が続いています。
私は、毎日定期試験の採点と
レポートや出席などの整理に追われています。
研究室は午後から暑いのですが、
風さえあれば、まだ過ごしやすく、仕事ができます。
やるべきことが多く、なかなか終わりません。
でも、私は、8月の上旬に、調査に出かけます。
このメールマガジンが届く頃には、
アポイ岳にいっています。
アポイ岳は、今回も紹介したマントルを構成している
カンラン岩からできている山で、
標高は1000mにも満たないのですが、
この山には、自然も固有ものがいろいろあり
不思議な山となっています。
そのために国立公園にもなっています。
詳しくは、別の機会としましょう。


戻る