地球の仕組み

戻る


Essay ■ 3_39 ゼロ・エミッション:サブダクション・ファクトリー4
Letter■ 日本の貢献・苦労は報われる
Words ■ 自然は偉大。人類資源の重要性に気づく前から無駄をしない


(2004年12月16日)
 サブダクション・ファクトリーをシリーズでお送りしましたが、これで完結となります。今回は列島の下でおこなわれる作用が、非常に効率的に大陸地殻をつくるという話です。


Essay 3_39 ゼロ・エミッション:サブダクション・ファクトリー4 

 大陸地殻の平均は、トーナル岩あるいはカルクアルカリ安山岩の組成でした。そのようなマグマが大量に活動しているのは、日本列島のような、プレートの沈み込み(サブダクション)があるところでした。もちろん火山だけでなく、深部でゆっくりと固まっていく深成岩の活動もあります。
 列島のマグマの活動は、火山のようなマグマの噴出だけでなく、巨大な花崗岩のマグマ、あるいはトーナル岩のマグマなど、さまざまな性質、種類のマグマの活動が起こっています。しかし、列島では、平均すると安山岩質のマグマで、実際に安山岩質の火山噴出がたくさん活動する場所であります。
 列島の下での物質収支を見積もる試みが、海洋科学技術センターの巽好幸さんによってなされています。まだ、完全に証明されたものではありませんが、その全貌が明らかにされつつあります。
 沈み込むプレートから水や水に溶けやすい成分が、列島の下のマントルに供給されます。条件によってはプレート自体が溶けることも起こります。これが、列島の下への物質供給です。出がらしや溶け残りのプレートは、マントルへと沈みこんでいきます。
 供給された水は、マントルを溶かして、まずは玄武岩質のマグマをつくります。列島の地殻が薄いときは、そのまま火山として噴出し、玄武岩の火山ができます。列島が厚い地殻になっているときは、玄武岩質のマグマが、すでにある玄武岩を溶かして花崗岩質のマグマを形成します。
 また、玄武岩質のマグマが地殻にたまった堆積岩を溶かすと、大量の花崗岩マグマをつくります。この堆積岩は、列島にある岩石が浸食されて溜まってできたものです。列島で、物質は自給されているものです。
 花崗岩質のマグマが、そのまま固まれば、深部で花崗岩になります。しかし、列島の下では、溶かした玄武岩質のマグマか別の玄武岩質のマグマかはわかりませんが、花崗岩質のマグマと混じるということがよく起こります。混じる比率によって、玄武岩に近いものから花崗岩(火山岩ではデーサイトや流紋岩とよばれます)まで、多様なものができます。しかし、列島で安山岩質のマグマがたくさん活動していることから、玄武岩の花崗岩の間の安山岩になることが多いとわかります。
 玄武岩質マグマと花崗岩質マグマが混じってカルクアルカリ安山岩ができるということは、柵山さん(残念ながら若くして地質調査中に亡くなられました)が、日本列島の火山の研究から、すでに明らかにされています。
 列島では、プレートがもぐり込むときに圧力が上がることによって必然的に起こる脱水作用が引き金になっています。列島の下で溶け残り物質は、残存物として、マントルに沈んでいきます(デラミネーションと呼ばれています)。このような特殊な履歴を持った物質は、マントル深部に貯蔵されます。
 もし、このような特殊な物質がまったく利用されることがないと、私たちはこのモデルが本当かどうか証明のしようがありません。ところが、これらの物質は、マントル対流やプルームとよばれる上昇流として、火山活動をしているところがあります。ですから、残存物が存在することが判明しています。
 まるで、地球全体が、廃棄物ゼロ(ゼロエミッション)の工場のように、無駄なく大陸地殻を形成しているようにみえます。巽さんは、このような作用を、工場に見立ててサブダクション・ファクトリーと呼んでいます。


Letter 日本の貢献・苦労は報われる

・日本の貢献・
4回にわたって続いたサブダクション・ファクトリーですが、
今回で終わりとなります。
私たちの住む日本列島が、
その秘密の解明の舞台となっています。
そして、それを主導的に解明している人たちも日本人です。
日本列島を調べることことで、地球の大陸のでき方から、
地球の物質循環まで、解明されつつあります。
日本人が、科学の進歩に大きな貢献をしていることです。
なかなか痛快なことですね。

・苦労は報われる・
日本列島は、色々な岩石が少しずつでるような
まるで標本箱のような地域です。
標本採取をするには便利なのですが、
鉱物資源を採掘するには、地質が複雑であるために、
大量に採集することができず、ハンディがありました。
しかし、苦労して採掘した結果、
石炭を地下深くで探がしたり、掘ったりする技術は、
世界の一流になりました。
露天掘りする国では、技術はそれほどいらず進歩もしません。
しかし、そんな国でも、地表の主だった石炭が採り終わると、
次は地下で採掘していかなければなりません。
日本は、その技術を輸出することができます。
今回は、列島の研究から大陸の起源を調べる研究を
輸出することなりそうです。
今回のサブダクション・ファクトリーでも
今までの苦労が報われるといいですね。


戻る