地球の仕組み
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3_28 温泉

(2002.11.14)
 先日、家族で海辺の温泉に出かけました。そこの温泉は、海が見える露天風呂がありました。露天風呂につかりながら、温泉について、2つの盲点があったことに気付きました。


 目の前に海の見える露天風呂です。風は冷たいのですが、露天風呂は気持ちいいです。この温泉は、食塩泉で、しょっぱいお湯です。このお湯のしょっぱさは、海のすぐそばだからだとおもっていたら、説明を読むと、「化石海水」というものであると書いてありました。
 化石海水とは、地層堆積時から含まれていた水のことです。地層は、陸から河川で運ばれた土砂が、海でたまったものです。ですから、堆積物の間にある水は、実は海水なのです。
 深い地層の地下水は、塩分を含むものが多くあり、これを化石海水と呼んでいます。つまり、海に近いからしょっぱい温泉なのではなく、海でできた地層から出てきた水だからしょっぱいのです。盲点でした。
 海辺の温泉とはいえ、火山などの熱源があれば、海水を温めることができますが、ここには、近くに火山はありません。ということは、ここの温泉は、深くまで掘って、地温勾配(深くなるほど地温が高くなる)を利用して、温泉としたものです。ということは、深層の地下水だということです。深層の地下水には、地層からしぼり出された水が含まれています。それが海水なのです。
 もともと地層は、海底に土砂がたまったものです。これが一枚の地層としての始まりです。海底に土砂がたまるという現象が何度も繰り返され、何枚もの地層が重なっていきます。やがて、下の地層が圧縮されて、含まれていた水がしぼり出されます。そのとき出てくる水は、海水です。これが、深いところからくると、地温勾配で温められたもの、つまり温泉としてでてきます。
 この地域の基盤の地層は、新第三紀末ものですから、海水は1000万から500万年前のころの海水だということになります。
 多分、この温泉が、山の中にあれば、上のように考える人も多いとおもいますが、海の近くという落とし穴に、私は、はまっていたのです。
 もう一つは、温泉の温度についてです。ここの温泉は、36.5℃だそうです。体温ほどですから風呂の湯として使うには温度が低すぎます。だから沸かしているはずです。温泉を沸かすと邪道だ、うめるぐらい熱い温泉がいいという人がいるかもしれません。でも、ここには、定義と成分濃度の点から盲点があります。
 日本では、温泉の定義は、1948年に制定された温泉法という法律で定められています。その定義によれば、25℃以上の温度を持っているものを温泉としています。だから、私が入ったような沸かさなくてならようなぬるいものでも、温泉といって大丈夫なのです。また、25℃未満でも、ある特定の成分を、法律上の値以上に含んでいれば、温泉といえるのです。
 その成分とは、法律上、19の成分あげられています。全溶存成分量、遊離炭酸、Li+、Sr2+、Ba2+、総鉄イオン、Mn2+、H+、Br-、I-、F-、ヒドロヒ酸イオン、メタ亜ヒ酸、総イオウ、HBO2、H2SiO2、NaHCO3、Rn、ラジウム塩であります。このような成分が、法律で決められた成分以上に、どれか一つでも含まれていたら、温泉といえるわけです。冷たいものでも、温泉ということができます。温泉の効能が、溶存成分によってもたらされているのであれば、こんような成分のを重視することも理解できます。
 成分の濃度をよく考えると、熱くてうめて入るくらいの温泉は、溶存成分は、うめた分だけ薄まることになります。ということは、うめた温泉は、溶けている成分の濃度が、薄まったことになります。
 温泉の効能が、溶存成分にあるのなら、薄めることによって、温泉の効能の効果が弱まることがなります。ところが、沸かす温泉は、水の蒸発によって、かえって成分の濃集は起こっているのです。つまり、沸かした温泉は、効能のおよぼす成分が濃くなることがあっても、薄まることはないのです。これも盲点でした。