地球の仕組み
表紙に戻る
 

3_26 緑色片岩

(2002年3月7日)
 変成岩の中で、典型的なもののひとつに、片岩(へんがん)というものがあります。片岩とは、薄い縞状のつくりをもった岩石です。特徴的な色の名前をつけて、岩石名とすることがあります。色のついた片岩は、野外で便宜的に使う名前ですが、専門語としても定着しているものもあります。緑色片岩もその一つです。緑色以外に、青、白、黒、赤などの色名がついた片岩があります。緑色と片岩という名前には、隠された地球の仕組みあります。それをみていきましょう。


 岩石は鉱物からできてます。ですから、岩石の色は、鉱物の色を反映したものです。岩石は何種類かの鉱物からできています。その平均的あるいは積分的な総和が、岩石の色としてみえます。いろんな色の鉱物にあったとしても、ある色の鉱物が大量にあり、他の色が少量であれば、その大量の鉱物の色が、岩石の色となります。多数決の原理です。
 片岩には、緑色以外にも青色、白色、黒色、赤色を持つものがあります。その色は、ある鉱物の特徴的な色なのです。緑色片岩には、緑泥石や緑閃石と呼ばれる鉱物が多く含まれます。鉱物の名前からもわかるように、どちらも緑色の鉱物です。
 片岩は、緑色の部分や黒色の部分が単独であるわけでなく、縞模様になっています。緑色片岩の部分でも、緑色の濃淡があり、縞模様がみえます。隣同士の片岩が、違う色をしているというのは、何を意味しているのでしょうか。変成岩の形成条件としては、数センチメートルほどしか離れていないので、温度や圧力などの物理的条件は、ほとんど変わらなかったはずです。違っていたのは、化学的条件だと考えられます。
 化学的条件の違いとは、化学成分の違いを意味します。変成岩になる前の岩石の種類が違っていたということです。でも、そんなことがあるのでしょうか。実は、よくあることなのです。例えば、地層では、薄い層が重なっていることがよくあります。砂岩から泥岩まで堆積岩が変化したり、堆積岩に火山灰が繰り返し挟まっていることもあります。このような地層のことを互層(ごそう)といいます。互層では、構成物の変化が、繰り返しが起こっているのです。それは、化学成分の変化の繰り返し、ともいえるのです。片岩の色の違いは、原岩の互層を反映していたのです。
 緑色片岩の原岩は、玄武岩質の火山砕屑岩です。青色片岩の原岩は、緑色片岩と同じ玄武岩質の火山砕屑岩ですが、変成条件の違うものです。黒色片岩の原岩は有機物などのたくさん含んでいる泥岩、白色片岩は石英や長石の多い砂岩やチャート、赤色片岩はマンガンの多い特殊な堆積岩からできています。
 変成岩として、もとの岩石とはまったく違った見かけとなったとしても、氏素性は隠せないのです。原岩の化学組成は、変成岩に忠実に反映されています。さらに縞模様(互層)のようは原岩のつくりも残っているのです。
 変成作用の影響も、変成岩には色濃く刻まれます。変成岩は、地下深くで圧しつぶされ、熱せられて変化したものです。片岩には、チリメンの模様のように、くしゃくしゃに曲がることもあります。あるいは地図でみなければわからないほど大規模に曲がったり(褶曲)、切れている(断層)こともあります。
 チリメン模様や、褶曲、断層の方向は、その変成岩が受けた力(応力(おうりょく)といいます)と、岩石の物理的性質(物性(ぶっせい)といいます)によって決まります。ですから、変成岩に残された褶曲や断層の痕跡を丹念に調べると、変成岩が形成されたときの応力のかかりぐあい(応力場といいます)や、応力の時間変化などが読み解けます。
 緑色片岩の緑という色と、片岩というつくりには、原岩の履歴と、変成作用の履歴が深く刻まれているのです。変成岩とは、過去の多くの事柄を背負った岩石なのです。