地球の仕組み
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3_24 花崗岩

(2002年2月21日)
 日ごろ目にする石は、川原の石ころや石造りの建物、橋などの建築物が主なものかも知れれません。これらは、大地を「構成する」ものというより、大地を「構成していた」ものです。山や海岸の崖をつくっている岩石が、本当の大地を構成している岩石です。でも、私達が一番よく目にする石は、建築用の石材として、もっとも一般的な花崗岩かもしれません。今回は花崗岩をみていきます。


 前回のエッセイ(3_23 玄武岩)で、海の底を構成する岩石が、玄武岩(げんぶがん)だといいました。では、大陸を構成する岩石は、どんな岩石でしょうか。それは、花崗岩(かこうがん)という岩石です。花崗岩の特徴は、玄武岩と比べると際立ってきます。比べてみましょう。
 花崗岩は、玄武岩と比べると、マグマでできたという共通点(火成岩といいます)以外は、対照的な特徴を持つ岩石です。岩石で対照的な特徴というのは、いくつもの点で認められます。
 玄武岩は粒が細かく、花崗岩は粒が粗くなっています。玄武岩は黒っぽい岩石で、花崗岩は白っぽい岩石です。玄武岩は重く(比重が大きい)、花崗岩は軽く(比重が小さい)なっています。玄武岩の形成年代は若く、花崗岩は古くなっています。
 このような違いは、地球の起源や地球の基本的なデザインに由来するものなのです。
 粒の細かい、粗いの意味するところは、玄武岩が火山岩で、花崗岩は深成岩ということです。玄武岩はマグマが地表で急激に冷却したのに対し、花崗岩はマグマが深部でゆっくりと冷え固まったものです。
 玄武岩が黒っぽいというのは、構成する鉱物が有色のものが多く、花崗岩の白っぽいのは無色あるいは白っぽい鉱物が多いということです。有色の鉱物とは、色のついたもののことで、玄武岩をつくる鉱物では、濃い色(岩石中では黒っぽく見える)を持ちます。そして、有色鉱物は、マグネシウム(Mg、苦と表現する)と鉄(Fe)を多く含む鉱物の場合が多く、そのようなマグネシウムや鉄を多く含む鉱物は、苦鉄質(くてつしつ)鉱物といいます。
 一方、無色の鉱物とは、色のない鉱物で、一般には透明です。白っぽい鉱物は、少量含まれている成分やできた後の変質や風化によって、もともと透明な鉱物が、白っぽく見えることもあります。無色あるいは白っぽい鉱物の代表は珪酸(珪素と酸素)をたくさん含む石英や長石(アルカリ元素とアルミニウム、珪素と酸素)などです。ですから無色あるいは白っぽい鉱物とは、珪長質(けいちょうしつ)鉱物とも呼ばれます。
 鉄を多く含む鉱物は、比重が大きくなり、アルカリ元素やアルミニウムは比重が小さくなります。そのため、玄武岩のほうが比重が大きく、花崗岩が小さくなるわけです。陸地つくる岩石が花崗岩というのは、海底をつくる玄武岩より軽いから、より上にあるわけです。
 地球の基本デザインは、重たいものは下、軽いものは上です。ですから、玄武岩より花崗岩のほうが高まりをつくっているのです。海と陸の違いは、水があるかどうかの違いだけでなく、高まりを作るか、作らないかの違いなのです。本当の違いは、陸をつくる岩石(花崗岩)と海底をつくる岩石(玄武岩)の基本的特徴の違いによっています。そして、陸が高まりを形成するために、海底が相対的に低いために、低いところとして水が溜まっているのです。この定義に従えば、水のない惑星でも、海と陸の区別が可能となります。
 年代の違いは、玄武岩が海洋の中央海嶺で常につくられ、やがて海溝に戻っていくというプレートテクトニクスの作用によって数千万年程度で更新されているの対し、花崗岩は比重が小さいために、地下に潜ることなく、いったんできたら、常に大陸として、地球表層に留まります。玄武岩と花崗岩の形成年代の違いは、岩石の基本的性質(比重)と地球の基本的デザインで(プレートテクトニクス)の反映なのです。
 花崗岩という石材は、日本のものだけでなく、世界各地から輸入されたものが多くあります。花崗岩は、ありふれた、よく見かける岩石ですが、もしかするとそれは、非常に古い大陸の切れ端がまぎれてこんでいるかもしれません。そして、花崗岩達のそんな古い履歴を読み取られる日がいつかと、待っているかもしれません。