地球の仕組み
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3_7 感じないリズム

(2001年5月10日)
 「3_6 天体のリズム」では、天体の周期的な運動について書きました。その周期は、人間が感じやすいものについて書きました。しかし、天体の周期にはさまざなまものがあります。人間が感じることのできないリズムについて見ていきましょう。
 人間の寿命は、せいぜい100年です。ですから、一人の人間がリズムとして感じることができるのは、100年に少なくとも2サイクル以上なければいけません。つまり最長でも50年周期のものです。現実には50年周期のリズムを、リズムとして感じることが困難です。なぜなら、偶然同じことがおこったのか、それともリズムなのかが、人間にとって周期が長すぎるのと回数が少ないため、判断することができないためです。ですから、現実的には、せいぜい2、30年周期の現象をリズムとして捉えることができます。
 時計を用い、先人が残した記録をたどれば長い周期性も知ることができます。先人の残した記録は、2000年間くらいはあります。2000年間あれば、太陽や惑星のリズムは記録することができます。つまり数百年以下の周期は、人類の「感じる」最長のリズムといえます。ハレー彗星は75年ごとにめぐり、冥王星は海王星より内側に230年ごとに20年間入ってくることも、リズムとして知ることができます。余談ですが、冥王星は1999年3月に海王星より外にいきました。次は230年後です。
 1000年より長いリズムは、知ることができないのでしょうか。科学を用いれば「知る」ことができます。天体運動は方程式で表すことが可能です。方程式と計算によって周期のを求めることができます。たとえば、ミランコビッチ周期と呼ばれるものや、太陽系の銀河系内での運動が、その例となります。
 ミランコビッチ周期とは、地球の回転に含まれている長期に及ぶ周期的な変化です。有名なものには、約10万年の周期があります。この周期は、氷河期と間氷期のリズムをもたらしたと考えられています。ミランコビッチ周期には、この他に、1万9000年、2万3000年、4万1000年、5万4000年、40万年などが知られています。
 太陽系は、銀河内での運動として、ミランコビッチ周期よりさらに長い周期を持っています。太陽系は、銀河のはずれにあります。銀河は中心部は球状ですが、少し外れれば円盤の形になっています。まるで、つばの広い麦藁帽子を2枚くっつけた形、「空飛ぶ円盤」のような形です。太陽系は、その銀河円盤面上を回転運動しています。面の上を正確に回転しているのではなく、面の上下を揺れ動いています。その周期が約2000万年といわれています。また、太陽系は銀河を約2億年で1周します。2000万年ごとに太陽系は、銀河の物質の多い部分(円盤面の中心)を通り抜けます。そのとき、太陽系に何らかの影響を与えているかもしれません。たとえば太陽系を揺さぶって、太陽から離れたところにある「オールトの雲」と呼ばれる彗星の巣を撹乱して、彗星をたくさん太陽に向けて送り込んだかもしれません。もちそれが地球軌道と交差すれば、地球にはその痕跡が残されているかも知れません。衝突すれば、生命の絶滅があったかもしれません。白亜紀の終わりの恐竜絶滅はそのようはリズムの一つだったのかもりれません。
 このような長いリズムが、地球あるいは生命、人類にどのような影響を及ぼすのかはよくわかっていません。このようなリズムの記憶は、地球のどこかの地層に、成分の変化や化石などとして、残されているかもしれません。地層のこのようなリズムの解読は少しずつ始まっています。その内容はまた別の機会にしましょう。