地球の仕組み
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3_3 空気のようなもの

 

地球
(2001年3月8日)
 存在を意識しないことを「空気のような」といういい方をします。しかし、空気はそんなに無意味なものでしょうか。実は、私たちが日ごろ吸っている空気には、地球の生命との長い時間にわたる歴史が秘められています。今回は空気に秘められた、歴史を見ていきましょう。
 空気の存在は、古くから信じられていました。紀元前500年頃、ギリシアのアナクシメネスは、「万物の根源は空気である」といっています。また、アリストテレスは、万物は水・空気・火・土の四元素から成ると考えていました。
 私たちが日ごろ吸っているいる空気は、地球の大気に対する名称です。地球の両隣の惑星、金星や火星にも大気がありますが、空気とはいいません。それは、金星や火星の大気と、地球の大気は、成分が違うので、特別に空気と呼ばれます。
 地球の空気と、金星と火星の大気を比べてみましょう。
 地球の空気の成分は、窒素(N2)が重量比で78.1%(体積比で75.5%)、酸素(O2)が20.9%(23.0%)で主要な成分となっています。次いで、アルゴン(Ar)が0.93%(1.29%)、二酸化炭素(CO2)が0.03%(0.04%)となり、以下ヘリウム(He)0.0005%(0.00007%)、クリプトン(Kr)0.0001%(0.0003%)、キセノン(Xe)0.000009%(0.00004%)となります。
 金星の大気は、酸素はほとんどなく、二酸化炭素が96.4%、窒素が3.4%を主成分としています。残りはほとんどがアルゴンです。
 火星の大気は、二酸化炭素が95.3%が主成分で、次いで、窒素が2.7%、アルゴン1.6%、酸素0.3%などからなります。火星には白い極冠がありますが、その中心部は水(H2O)の氷であり、季節により変動する周辺部は二酸化炭素が氷結してドライアイスになったものだと考えられています。
 火星と金星の大気は、似ています。しかし、地球の大気は、酸素を主成分の一つとして含み、二酸化炭素が0.03%しか含みません。一方、火星や金星の大気は二酸化炭素が主成分となる、酸素ははほとんど含まれません。この違いはどうして生じたのでしょうか。
 地球の大気も、金星や火星と同じように、もととも二酸化炭素主体の大気だった考えられます。同じ大気からのスタートです。それが、地球には海があったことによって、大気に大きな違いを生じたと考えられています。
 大気中の二酸化炭素は、水に溶けて炭酸(H2CO3)となり、水中にあったカルシウム(Ca)などのイオンと結びついて、固体として沈殿します。このようにして大気中の二酸化炭素は、固体として地球の地殻に保存されます。
 さらに、海には生命が誕生し、光合成をする生物によって、酸素が放出されます。生命による酸素合成が長い時間に渡ったので、大量の酸素が大気に蓄えられたのです。
 このように地球の空気には、地球と生命の歴史が織り込まれています。実はもっと、複雑で面白いメカニズムがあることがわかってきたのですが、それは稿を改めて紹介しましょう。


http://seawifs.gsfc.nasa.gov/SEAWIFS/IMAGES/NEW/Caribbean/
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