生命の歴史
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Essay■ 2_217 生命誕生の条件 12:構造侵食
Letter■ 新鮮な気持ちの正月・大学の日常
Words ■ 今年こそ穏やかな生活を


(2024.01.04)
 明けましておめでとうございます。正月早々ですが、昨年まで連載していた、途中であったシリーズ「生命誕生の条件」を続けていきましょう。長くなっているのですが、あと2回で終わる予定です。


Essay■ 2_217 生命誕生の条件 12:構造侵食

 「生命誕生の条件」のシリーズで、生命合成のためには、天然の原子炉と間欠泉というモデルが、現在有力だと紹介してきました。しかし、そこには大きな疑問も2つありました。その1つ目の疑問が、冥王代の年代の砕屑性ジルコンは残っているのに、なぜ岩石が残っていないのか、というものでした。
 鉱物が存在しているということは、冥王代にはマグマができ火成作用が起こって固まり、岩石になった過程があったことになります。間接的ですが、地殻があったことになります。ところが、40億年前より古い岩石は見つかっていません。証拠のない時代「冥王代」との定義通りの時代となります。
 原因のひとつには、古い証拠ほど残りにくくなるという「時間の淘汰」があります。砕屑粒子は残っているのが岩石がないのは、なんらかの作用や原因があったのではないかと考えられます。
 ふたつの要因が考えられています。ひとつは後期重爆撃で、もうひとつが構造侵食です。
 後期重爆撃は、地球に揮発成分をもたらす現象でした。それ以前の地球は、揮発成分がない状態で、硬い地殻が、厚く覆った状態でした(スタグナントリッドテクトニクス stagnant lid tectonics と呼ばれています)。プレートテクトニクスは機能せず、大きな変動はなく、火山が噴出するだけの状態だったと考えられます。
 しかし、43.7〜42.0億年前にかけて、大量の隕石の爆撃が起こります。小惑星帯や木星のあたりの軌道から、小天体や隕石が大量に飛んできて、地球に衝突します。厚い地殻が破壊され、揮発成分がマントルへ追加されることで、地球に大きな変化が起こります。
 後期重爆撃で多数のクレータができ、地球の岩石は破壊され飛び散り、時には岩石を溶かしてマグマができます。激しい衝突で、地球の岩石が大半が破壊されたと考えられます。月では、表層はレゴリスと呼ばれる、破砕された礫や砂のようなもので覆われています。レゴリスは、重爆撃で形成されたものがあります。隕石が地球の公転軌道の外側から来ても、地球は自転しているので、表層の岩石が、万遍なく破壊されていきます。表層はレゴリスで覆われ、岩石は破壊され、表面からはなくなっていた状態だと考えらます。ですから、海や大気だできても、堆積作用で移動するのは砕屑性の礫や砂だったのでしょう。
 衝突で揮発成分がマントルにも加わります。するとマントルの流動性が大きくなって、マントル対流が起こります。流動性の増加とともに、対流は大きくなり、やがて破壊された地表付近まで達します。プレートテクトニクスがはじまり、表層でプレート運動が起こります。
 海洋プレートが形成され、沈み込みもはじまります。この時、構造侵食として、地表にあった冥王代の地殻の岩石の大半が、マントルに持ち込まれていきます。その結果、冥王代の岩石の痕跡がなくなったと考えられます。
 残っていたとしても、レゴリスとして砕屑物だったのでしょう。これが、冥王代の岩石が残っておらず、砕屑性ジルコンは残っている理由ではないかと考えられます。


Letter■ 新鮮な気持ちの正月・大学の日常

・新鮮な気持ちの正月・
COVID-19の感染対応も消えて
久しぶりに普通の正月を
迎えることができました。
初詣も、正月の買い物も、
マスクなしに、出かけることができます。
4年前には当たり前であったことが
3年間、当たり前ではなくなりました。
そして以前の日常がもってきました。
新鮮な気持ちで正月を迎えられます。

・大学の日常・
大学の1月の講義の再開は、
土日祝日の関係で9日(火)からです。
13、14日は大学入学共通テスト
この日には、行事もあり、飲み会もあり、
忙しい一日になります。
こような忙しさも、大学に日常が
戻ってきた証拠でしょう。
大変ですが、味わっていきましょう。