生命の歴史
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Essay■ 2_211 生命誕生の条件 6:ABEL
Letter■ 予約配信・入試のシーズン
Words ■ 最後の野外調査にいきました 


(2023.11.16)
 形成直後の地球は「ドライで裸」だったと推定されるようになってきました。地球は、形成時から現在の間には、大きな表層環境の変化があったようです。いつ、何が起こったのでしょうか。


Essay■ 2_211 生命誕生の条件 6:ABEL

 月の表層にあるクレータ年代学から、月が形成されたあとに、激しい小天体の衝突があったことがわかってきました。クレータ形成年代は、43.7〜42.0億年前に集中していました。約2億年弱ほどの期間に、激しい衝突がありました。月形成後の衝突だったため、「後期重爆撃」と呼ばれています。
 この小天体は、どこから来たのでしょうか。小惑星帯から木星や土星軌道あたりから飛来したと考えられています。その理由は、太陽系形成のモデルが更新されたことから考えられてきました。木星は太陽から離れたところで形成されたのです、形成直後に、太陽系の内側の地球軌道付近まで入ってきました。土星も続いて内側に入ってきます。2つの巨大天体が似た軌道に入ってくると、共鳴し合って、お互いの軌道が乱れて、両者が外に移動していきます。そして、今の軌道に落ち着きます。
 このような不思議な天体の移動や運動は、コンピュータによるシミュレーションでわかってきたものです。これまでの太陽系形成モデルでは、太陽系の外側の巨大惑星の成長が、非常にゆっくりとしたものになり、太陽系の惑星形成に期間に、現在の大きさには成長できそうもないという課題がありました。その課題が、木星と土星が移動するというモデルで、解消できるようになってきました。
 木星や土星が、現在位置に戻ると、小惑星帯から外側に多数あった小天体の軌道が乱されます。それらが太陽の引力に引っ張られて、内側に入り込み、地球や月に衝突してきたと考えれます。
 木星や土星の軌道でできた天体は、氷や揮発性成分を多く含んでいるものです。それらが月や地球に、2億年ほどの間に、多数衝突したことになります。小天体の衝突が、揮発成分をもたらしました。揮発成分は、地球の大気と海洋のもとになります。地球は十分に大きく、揮発成分を保持することできました。しかし、月は小さく引力も小さかったので、大気を保つことができませんでした。
 後期重爆撃によって、地球にはじめて海と大気ができたことになり、生物構成元素がそろうことになります。この小天体による元素供給を「生命構成元素の降臨」(ABEL:Advent of bio-elements bombardment)やレイトベニア(Late veneer)と呼んでいます。揮発成分のうち水蒸気は、やがて液体の水になり、海を形成します。海の誕生により、プレートテクトニクスも働きはじめ、大陸地殻ができています。その結果、ハビタブルトリニティが揃うことになります。
 生命の材料となる元素や成分はそろいましたが、次なる課題は、前に述べた生命の前駆物質や生命物質を合成するための多様な条件を、どう揃えていくのかがです。次回以降としましょう。


Letter■ 予約配信・入試のシーズン

・予約配信・
先日まで野外調査にでていたので
このエッセイは予約配信としました。
北海道の山では、初雪はすでにあったのですが、
里ではまだ降っていません。
遠出をする時、途中に峠越えがあるときは、
スタットレスタイヤにいつ替えるかを
この時期にはいつも悩みます。
今年は、10月から野外調査にでていますので、
10月末の調査に備えて交換しました。
ですから、今回の調査での
峠越えの道でも安心していけます。
ただし、野外調査で雪があると
ほとんどデータが取れませんので
実質的な成果は乏しくなりますが。

・入試のシーズン・
大学は、入試のシーズンがすでにはじまっています。
9月以降、いくつもの種類の入試制度で
受験ができるようになっています。
受験生にとっては、いきたい大学や学部学科に
なんどもチャレンジできるのでいい制度です。
3月まで続くので、大学側の負担は多くなりますが、
入学生の確保が、多くの私立大学での
至上命題となっていますので、
仕方がありませんね。