生命の歴史
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Essay■ 2_209 生命誕生の条件 4:E コンドライト
Letter■ E コンドライト・道東の調査へ
Words ■ 稀な隕石が主原料に 


(2023.11.02)
 生命の前駆物質を合成するためには、非常に多様な条件が必要でした。最近では、地球の材料にも新しい考えが登場してきました。その材料から考えられる初期地球は、今まで想像されたことのない姿でした。


Essay■ 2_209 生命誕生の条件 4:E コンドライト

 生命誕生の条件には非常に多様なものがあり、ひとつの場での合成は不可能のようです。これまで、ひとつの材料、ひとつの場で生命を合成していくことを考えられてきましたが、それは難しいようです。次に、地球の材料と初期の環境が、これまで考えられていたものではなさそうだ、ということがわかってきたした。それを紹介していきましょう。
 これまで、地球の材料は、炭素質コンドライトだと考えられてきました。炭素質コンドライトには、中に大気の成分(二酸化炭素、窒素)、海の成分(H2O)、そして地殻・マントルになる岩石の成分、核の成分(金属鉄)など、すべてが含まれています。炭素質コンドライトが材料ならば、地球ができると考えられてきました。
 現在の太陽系では、地球に水が存在できますが、太陽系の形成時にも同じ条件だったのでしょうか。
 太陽系形成のころの条件を考えていくと、太陽の輝きが不安定で、かなり激しく輝く時期もありました。その証拠として、隕石のコンドライトがあります。コンドライトは、それまであった固体成分がすべて溶さかれています。その後、その後液滴として固まっり集まったものがコンドライトです。当初、太陽系を覆っていた原始太陽系ガスも、初期にすべて吹き飛ばされています。
 太陽の輝きが激しくなっていた時期、地球軌道は非常に温度が高かったときがあったと考えられます。
 現在の小惑星帯を見ていくと、炭素質コンドライトも多数存在しています。その軌道をみていくと、太陽に遠い側に炭素質コンドライトがあります。太陽に近づくと、H2Oを含まない隕石タイプになっていきます。小惑星帯で太陽にもっとも近い内側には、エンタタイト(頑火輝石)コンドライト(E コンドライトと略されています)が多くなっていることがわかります。E コンドライトは、H2Oをまったく含まない特異な隕石で、小惑星帯でも隕石でも稀なものです。
 以上のことから、冥王代の地球軌道には、H2Oや揮発成分を含んだ物質は存在できないと推定できます。地球軌道は、非常に乾いた(ドライ)な物質しかなかったと考えられます。地球軌道では、E コンドライトのような物質があり、それが材料になったのではないかと考えられてきました。
 そうなると、できたての地球には、海(水)も大気(二酸化炭素、窒素)もない「裸」の岩石惑星だったことになります。炭素質コンドライトであれば、地球のすべての素材があらかじめ揃っていたのですが、E コンドライトからできたとなると、「ドライで裸」の地球からのスタートとなります。
 そこから現在の、海と大気、生命のある地球になるのは、いくつもの事件が必要になりそうです。次回としましょう。


Letter■ E コンドライト・道東の調査へ

・E コンドライト・
E コンドライトは稀な隕石です。
小惑星帯は炭素質コンドライトが存在する環境で
E コンドライトはないところだったためでしょう。
E コンドライトは、エンタタイトと金属鉱物からできています。
エンタタイトは珪酸塩鉱物で
鉄含有量が少ないですが
鉄は金属や硫化物に含まれています。
この隕石は、非常に還元的で酸素の少ない条件で
形成されたことになります。
地球もそのような位置にあったと考えられます。

・道東の調査へ・
このエッセイは、週末から野外調査にでているので
予約配信をしています。
道東の山に入っていきます。
道東にたどり着く前には、
日高山脈を超える狩勝峠があります。
自動車道では、トンネルになっているため
雪の影響はかなりましになっています。
トンネルの前後には、長い上り下りの道があります。
積雪があれば、冬タイヤでないとだめでしょう。
もちろん冬タイヤにしてでかけます。