生命の歴史
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Essay■ 2_204 全球凍結と生物進化 5:盛衰のシナリオ
Letter■ 集中講義・排雪作業
Words ■ 春近し 


(2022.03.10)
 地層ごとに有機物が分析されました。有機物の炭化水素の値と組合せから、生物種の区別がなされました。地層ごとで、生物の盛衰がわかってきました。全球凍結からその後の時代にかけて、生物変遷史が編まれました。


Essay■ 2_204 全球凍結と生物進化 5:盛衰のシナリオ

 全球凍結の時代とその直後の時代に堆積した岩石の有機物が分析されました。生物がいたことだけでなく、どのような生物のタイプであったかも、限定することができました。
 その方法は、前回紹介した有機物の炭化水素の炭素量から考えられていきました。炭化水素は、昔の生物の痕跡を示すバイオマーカーとして利用されています。
 時間経過ととともに、有機物は分解されていきます。特に長い時間がたつと(古い時代のもの)になると、分解は進みます。その時、生物ごとにもっている有機物の違いから、特徴的な数の炭化水素として分解されていきます。炭化水素の値から、生物タイプを探っていくことができます。このような化合物を、生物の痕跡「バイオマーカー」として利用します。
 論文では、岩石中の炭素が、17のヘプタデカン(heptadecane、C17H36)、19のノナデカン(nonadecane、C19H40)とプリスタン(pristane、C19H40)、20のフィタン(phytane、C20H42)、29から31のホパン(hopane)、27から29のステラン(steranes)に注目しています。
 炭化水素の組み合わせから、生物のタイプが特定されていきます。ヘプタデカン+ノナデカンは藻類がもっている組み合わせとなります。プリスタン+フィタンは光合成生物、C29からC31ホパンは真正細菌、C27からC29ステラン真核生物の痕跡を示していると考えられています。
 それらの分析結果の解析から、地層ごとでの生物の特徴とその変化を捉えています。下位の地層のダイアミクタイトから、少ないながらも光合成生物の痕跡が見つかりました。一方、真正細菌も真核生物は見つかりませんでした。次の層の炭酸塩岩の最も下位(全球凍結の終了直後)になると、生物の総量が減っていきます。その後、上位では生物の総量が増えてきます。増え方は、まず真正細菌が急激に増え、その後真核生物が増えていきます。
 地層の位置(層準といいます)ごとで、炭化水素の組み合わせの増減から、生物種の変化が読み取ることができたわけです。そこから、全球凍結からその後の時代までの、生物の盛衰のシナリオがつくられてきました。
 光合成生物は全球凍結中も生き延びていたことになります。全球凍結直後には、生物量は減少していきます。全球凍結の直後は、暴走的な高温期が訪れたとされています。急激な環境変化で大絶滅が起こったと考えました。その後、気温が下がってくると、真正細菌が一気に繁栄し、穏やかな気温になってくると真核生物が増えてきます。
 このようなシナリオが考えられていますが、いくつか気になることがあります。それは次回としましょう。


Letter■ 集中講義・排雪作業

・集中講義・
今週は集中講義が実施されています。
新4年生のための授業です。
北海道では、まん延防止等重点措置が
3月21日まで延長されました。
この集中講義は、資格取得のため必要なため、
対面での授業として許可をもらって実施しています。
一日中、集中しなければならないので、
学生だけでなく、教員もヘトヘトになります。
そのため週末にこのエッセイを予約配信にしています。

・排雪作業・
北海道は異常な累積積雪量となっています。
例年地域と行政による排雪作業が
おこなわれているのですが、
すごく時間がかかっています。
我が地区は、例年なら2月に下旬には
終わっているはずなのですが
3月はじめの週末にやっとおわりました。
しかし週明けまで排雪作業は残された地区もあります。
予定としてアナウンスされたのは2月下旬の週でしたが、
3月初旬まで延びています。
排雪が終わった自宅前は、
これまで積み上げられた雪が
きれいに削られています。
道路側に2m以上の直立の雪の崖ができました。
暖かい日に崩れ落ちそうで少々心配です。
でも、広い道路がでてきた通行しやすくなりました。