生命の歴史
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Essay■ 2_203 全球凍結と生物進化 4:徹底した汚染の排除
Letter■ 汚染チェック・雪解けの季節へ
Words ■ 春近し 


(2022.03.03)
 全球凍結は、生物に大きな影響を与えたはずです。多分、大絶滅が起こったはずです。その影響はどこまで及び、影響をどう捕まえればいいのでしょうか。化石がない時代での、生物の絶滅と生存を確認していくことになります。


Essay■ 2_203 全球凍結と生物進化 4:徹底した汚染の排除

 静谷さんたちは、全球凍結の6億5千万年前から5億4千万年前の期間に堆積した地層を調べて、その時期の生物全体の様子を探りました。
 地層は、中国の長江地塊(Yangtze Platform)に区分されているところにあります。宜昌(Yichang)市の北東にある三峡ダム付近のJiulongwanという地域に露頭があります。
 下位の地層(古い時代)はNantuo層と呼ばれ、ダイアミクタイト(diamictite)という岩石になります。このダイアミクタイトは、成因が確定していない時に使われます。泥岩の中に、いろいろサイズの岩片を不規則に含んだ堆積岩ですが、成因が判明していなときの名称です。ここでは氷河堆積物だと考えられています。
 上位には各種の炭酸塩岩からできたDoushantuo地層があります。炭酸塩岩としては、石灰岩と苦灰岩(ドロマイト)があり、それぞれ泥の薄層を含むことがあります。
 下位のダイアミクタイトは、全球凍結の時期、もしくは末期で氷河が溶け出した時代にできた地層です。炭酸塩岩は、全球凍結のあとの温暖化した時期の地層です。大気中にあった大量の二酸化炭素があり、それが温暖化を起こし氷河期を終わらせました。氷が溶けて海洋できたとき、海水に二酸化炭素が溶けて、沈殿してできた地層です。
 これらの2種類の地層から試料を採取しています。岩石の表層には現生生物や排気ガスなどに由来する有機物が混入しているという研究があるので、汚染がないように岩石の内部から試料を採取するようにしています。
 さらに、全有機体炭素(TOC:Total Organic Carbon)と有機物から由来する(300℃までで放出される)炭化水素(S1と呼ばれている)を比べていきます。S1/TOCが1.5以下なら、もともとの生物が有機物で、以上だと生物起源ではないと判断されます。非常に慎重に試料の汚染の検証がされています。
 下位のダイアミクタイトから15個、上位の炭酸塩岩から17個と泥岩から6個の試料を採取しています。汚染のない、堆積した時代の有機物だけだと確認された試料だけを用いて、分析しています。
 ダイアミクタイトは全球凍結の最中、もしくは海が開き始めた時の氷河堆積物です。もし生物の痕跡が見つかったら、全球凍結を生き延びた生物がいたことがわかります。
 どんな種類の生物が生き延びたのでしょうか。詳細は次回にします。


Letter■ 汚染チェック・雪解けの季節へ

・汚染チェック・
有機物の汚染のチェックは、古い時代のものになるほど
非常に慎重にならなければなりません。
なぜなら、明瞭な化石の形態などがみれないからです。
また、形成後のいろいろな時代の
汚染の可能性も排除しなければなりません。
ここで示した汚染のチェックの方法は、
先カンブリア紀の石油探査で用いられるものだそうです。
慎重に汚染をチェックされた試料で
今回の研究は実施されています。

・雪解けの季節へ・
3月に入りました。
北海道は温かい日と雪の日が繰り返しています。
温かい日には雪が溶けていきます。
北国もいよいよ春に向かっていきます。
春は待ち遠しいのですが、
雪解けのぬかるみの時期は大変です。
水たまりや車の水はねなど
いろいろ厄介な状態になります。