生命の歴史
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Essay■ 2_194 LUCA 3:天然の原子炉
Letter■ 猛暑・原子爆弾
Words ■ 暑さは苦手で、気力が萎えてしまいます 


(2021.07.22)
 思いもよらぬ現象が、自然界では起こっています。その現象が発見されたとしても、他への場面に適用するには、発想の転換が必要になります。その転換が正しいかどうかは、新らな検証が必要になります。


Essay■ 2_194 LUCA 3:天然の原子炉

 熱水噴出孔を生命誕生の場とするのが、現在、主流の考え方です。しかし、最近、全く異なった生命誕生の場が提案されてきました。天然の原子炉を利用した誕生の場です。
 天然の原子炉とは、どういうものかを、まずは理解しておく必要があるでしょう。
 原子炉とは、制御しながら核分裂反応を起こして、核分裂で放出されるエネルギーを発電に利用するものです。ウランには核分裂する核種をいくつか含んでいます。核分裂しても、連鎖反応がおこらなければ、通常の放射崩壊になります。連鎖反応を起こすには、ウラン(235U)の濃度が大きくなっていなければなりません。
 原子力発電所では、ウラン濃度を大きくして、制御できる状態で連鎖反応を起こして発電しています。連鎖反応を起こす濃度を臨界状態といい、放射性核種(235U)の濃度が3〜5%になったものです。
 現在では天然のウラン鉱石では、濃度が臨界状態に達することはないのですが、あるウラン鉱山から不思議な鉱石が見つかりました。ガボン共和国のオクロでは、20億年前に堆積したウラン鉱があります。このウラン鉱石を調べていくと、ウランの同位体組成(235U/238Uの比)が、通常の天然の鉱石は0.7202%なのですが、オクロのものは0.600%となっていました。小さな値の差なのですが、これは有意の差となっていました。他の同位体組成(NdやRu、Xeなど)でも、他の鉱石と違いがありました。
 この違いを調べていくと、1972年に天然の状態で、原子炉と同じように臨界状態で核分裂の連鎖が起こったためだとわかってきました。しかし、古いほど、天然状態で核分裂を起こすほどのウラン濃度はあった可能性は、黒田和夫さんが、1956年にすでに予測していました。予測通りの現象が発見されたのです。
 20億年前のウラン鉱床では、ウラン(235U)が3.54%もあり、そこで減速材となる水があれば、連鎖的な核分裂が可能となります。計算していくと15万年間ほど、核分裂を起こしていたことがわかってきました。その後、似たような天然の原子炉が、世界各地の16箇所で見つかっています。
 もっと古い原始地球(冥王代)ならば、ウランが20%を越えていてもいいはずだと推定されます。つまり、古い時代には天然の原子炉がもっと一杯あったことになります。丸山茂徳さんたちの研究グループは、冥王代には核分裂の熱により、温泉や間欠泉が多数あったはずだと考え、それを利用して生命が誕生したのではないかと提案しました。岩石群の中を熱水が通り抜けることで、生物誕生に必要な成分が集められ、核分裂反応で化学反応が進むと考えられました。その痕跡が現在も見つかっています。それは次回としましょう。


Letter■ 猛暑・原子爆弾

・猛暑・
週末に2泊3日の調査にでました。
ちょうど北海道も猛暑に当たり、
暑さでバテてしまいました。
外にいる時はいいのですが、
ホテルでの寝る時、エアコンでは寒いし
エアコンを切って窓を開けると暑いしと
調整がうまく行かなかったので
熟睡できず疲れが取れず、ぐったりと疲れました。
帰ってきたら、もっと暑い日が待っていました。

・原子爆弾・
核分裂は、放射性核種では
定常的に起こっている現象です。
核分裂を安全に連鎖反応として起こすためには、
制御する必要があります。
制御されたないものは原子爆弾となります。
臨界にならないサイズで
濃度を大きくしておいた核物質を用意しておき、
それを合体させることで臨界にして
一気に核分裂を起こすことで爆発させます。
それなりに難しさもありますが、
発電よりは簡単です。
制御して発電に利用するのは、緊急事態への対処など
難しい問題がいっぱいあります。
福島原発は制御できない状態が起こったことになります。