生命の歴史
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Essay■ 2_181 真核生物の誕生 6:ロキアーキオータ
Letter■ 札幌休校・マスク不足
Words ■ 新型コロナウイルスの猛威はまだまだ続きそう


 古細菌の中でも深海底の広く分布していて、真核生物に近い種類があることがわかってきました。これまで困難だったその古細菌の培養を、やっと成功しました。その間、12年もかかって実験が試行錯誤されていました。


Essay■ 2_181 真核生物の誕生 6:ロキアーキオータ

 ロキアーキオータが、世界中の海底堆積物にかなり広く存在していることは、以前から知られていました。ところが、その実態は不明でした。その理由は、ロキアーキオータだけを取り出して調べることできなかったからです。井町さんは、それにチャレンジしていました。その方法と実態解明には長い年月がかかっています。
 2006年5月、「しんかい6500」で南海トラフのメタン湧出帯(水深2533 m)から採取した深海底堆積物を、実験室で同じ条件で、約2000日間、培養をおこないました。当たり前のことですが、堆積物中には、多様な微生物が混在していることが、確認されました。
 次に、微生物群からバクテリアを除いていって、残った生物群を培養していきました。1年後に、少数の古細菌のロキアーキオータとその他数種類の微生物だけの状態にできました。次に、培養の物質や条件を整えながら、ロキアーキオータのみを抽出するという実験を続けました。最終的に、ロキアーキオータと、もうひとつの古細菌の2種が共生している(共培養系と呼ばれています)状態にまで、分離することに成功しました。それは、2018年のことでした。深海生物採取から12年もかけて、やっと成功したのです。この古細菌は、Prometheoarchaeum syntrophicum MK-D1株と名付けれました。
 ロキアーキオータ培養が難しかったのは、増殖の速度が非常に遅いことと、細胞のがあまり密集していては増殖できないためでした。増殖の速度とは、細胞が倍になる時間で比べられるのですが、実験によく用いれる大腸菌と比べると1000分の1の速度(ロキアーキオータの倍加時間は14日から25日)しかありませんでした。また、細胞ができるだけ密集させて培養する方が効率がいいのですが、あまり密集すると増殖速度が遅くなることもあります。増殖するもっとも多い密度を「最大細胞密度」といいます。ロキアーキオータの最大細胞密度も、大腸菌と比べて1000分の1程度(〜10万 個/ml)の遅いものでした。
 さらに、ロキアーキオータは、単独では生きられず、別の生物との共生によってしが生きることができない生物でした。共生していた生物は、メタン生成古細菌(Methanogenium属と呼ばれる仲間)でした。
 ロキアーキオータは、ゆっくりと、少しずつしか増えず、密集もしない、ある種とのみ共生しないと繁殖できないという、非常に特殊な生き方をしている生物でした。そのため、非常に培養が難しかったのです。この困難を克服して井町さん、ロキアーキオータの培養に成功したのです。
 では、ロキアーキオータとは、どんな生物だったのでしょうか。次回としましょう。


Letter■ 札幌休校・マスク不足

・札幌休校・
北海道と札幌市では
先週に新型コロナウイルスの感染者の急増で
再度、札幌市内の小・中・高校の休校が決まりました。
再度一月ほどの休校になります。
授業の遅れもさることながら、
児童たちの心のケアは大丈夫でしょうか。
特に、新入生や今年度卒業予定で受験がある
児童生徒は非常に不安だと思います。
大学も同様です。
新入生へのケアが十分できないので心配です。

・マスク不足・
マスクが不足しています。
幸い我が家はまだ数枚買い置きがあります。
それを予備に保存することにして、
古いものを洗っては使いまわししています。
不織布で丈夫なので、なんとからなっています。
でも、ガーゼや布マスクは本当に有効なのでしょうか。
配布するなら、その費用と
国を挙げての増産を願いたいものです。
布もいいのですが、効果からいえば、
不織布にしてほしかったですね。