生命の歴史
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Essay■ 2_180 真核生物の誕生 5:メタゲノム解析
Letter■ WEB授業・調査費
Words ■ 自粛の気詰まりをそれぞれで気分転換法を考えよう


(2020.04.09)
 新型コロナウイルスで利用されているPCR装置は、生物の進化の探求でも活躍しています。PCR検査では、一つの種類にしてDNAを調べるのが理想なのですが、できない時でもメタゲノム解析として利用されています。


Essay■ 2_180 真核生物の誕生 5:メタゲノム解析

 古細菌のロキアーキオータは、2015年にスウェーデンの研究グループが、生物学的な重要性を示しました。研究グループは、深海堆積物に生息する古細菌群の存在をゲノム解析で見つけました。ただし、このゲノム解析は、通常のゲノム(遺伝子)解析ではなく、メタゲノム解析と呼ばれるものでした。
 通常のゲノム解析は、目的の生物だけを集めて、そこからDNAを取り出して分析して解析していきます。生物の数が少ないときは、集められるDNAの量も少ないのですが、一定の手順でDNAを増殖させてから検出します。新型コロナウイルスで話題になったPCR(polymerase chain reaction)装置が利用されています。PCRはポリメラーゼ連鎖反応のことで、DNAの特定の領域を増殖(100万から数10億倍)させていくことです。PCR装置では、自動で増殖して解析していく装置になります。
 ただし、PCR検査をするためには、目的の生物だけに分離してから、DNAを抽出していかなければなりません。つまり、目的の生物だけを一定量集めておかなければなりません。もし目的の生物だけを分離できないときは、DNA解析をしても、雑多な生物のDNAのを読み取ってしまいます。それがメタゲノム解析という方法です。
 メタゲノム解析は、生物が分離できない場合に利用される方法です。解析の結果から、ある生物に特有のDNAをが見つかれば、その生物がいることが特定できます。例えば、特定の代謝機能を担っているDNAを調べることで、そのような代謝をする生物がいるかどうかを、探すことができます。
 深海堆積物からロキアーキオータの仲間を集めて、メタゲノム解析をしました。ただし、このとき単一の生物種かどうかは不明のままでの分析だったので、メタゲノム解析です。ロキアーキオータ群から、真核生物に特有とされてきたゲノム(遺伝子)が多数見つかりました。他のロキアーキオータに類似している古細菌にも、似た性質をもっているものがあることがわかりました。これらの真核生物に似た古細菌類を、ひとつにまとめにして(上門という区分になる)、「アスガルド上門」に区分しました。さらに彼らの研究では、アスガルドの仲間がもっとも真核生物の起源に近い古細菌であることもわかってきました。ところが、細胞の様子、生活の状態、生存の環境・条件などの実態は、まだ全くわかっていませんでした。
 実態の解明には、アスガルド上門に属するいずれかの古細菌を、実験室でひとつに種として培養して、詳細に調べる必要がありました。この培養が、真核生物への進化において、重要な課題になると世界的に大きく期待されていました。
 そこで登場するのが、井町さんの研究成果です。次回としましょう。


Letter■ WEB授業・調査費

・WEB授業・
大学は4月一杯は休校となり
5月もWEBでの授業になります。
教職員は混乱しています。
どのようにして授業をすればいいのか、
それは教員一人のスキルでできることなのか。
全学生が同等に受講できるか
などなど、いろいろな疑問もあります。
今週から講習会がありますので、
それに参加してから、どうするかを
考えていきたいと思っています。

・調査費・
学内の競争的資金が採択されたのですが、
申請内容は調査費がメインでした。
本州が2回、道内が数回という調査予定でした。
ゴールデンウィークと5月に調査予定を入れていました。
それが、今回、出張が禁止となりました。
野外調査を中止せざる得ませんでした。
そのため研究費の執行の内容を
変更しなければなりません。
それを関係者と相談していきたいと考えています。