生命の歴史
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Essay■ 2_179 真核生物の誕生 4:2つの偶然
Letter■ 新年度・集中講義
Words ■ 新入生には楽しいはずの新学期が・・・


(2020.04.02)
 その古細菌の発見は、10年以上も前のことでした。その古細菌が、真核生物への進化を解明するために、重要であることがわかったのは、ほんの少し前でした。時間差を乗り越えて、やっと謎解きをはじめることできました。


Essay■ 2_179 真核生物の誕生 4:2つの偶然

 前回紹介したように、ドメイン同士の関係は、分子生物学的手法からわかってきました。古細菌は原核(DNAが細胞内に散らばっている)なのですが、細菌(原核生物)よりも、真核生物に似ていました。そこから、進化の過程として考えると、まず細菌と古細菌が生まれ、その後古細菌から真核生物が生まれたと推定されました。
 生物進化に関するこのような考え方を、”Entangle-Engulf-Endogenize model”、Eが3つ並ぶので、E3モデルと略されて呼ばれています。"Entangle"は「巻き込む、からませる」という意味で、"Engulf"は「吸い込む、飲み込む、(巻き込む)」、"Endogenize"は「内生の、内部に生じる」という意味があります。つまり、他の生物を、いろいろな方法で、自身の細胞内部に取り込むことで進化してきたというモデルになります。
 問題は、現在生きている生物から、古細菌と真核生物と中間的な性質をもったいるものを見つかるかどうかです。
 そんな時、2つの偶然が重なり、実態が解明が一気に進みました。
 まず、今回紹介している論文の著者の井町さんが、先行してある特殊な古細菌を採取して研究をしていたこと、それからかなり遅れて別の国の研究グループがその古細菌のグループがもっとも真核生物に近いことを示したこと、です。
 その真核生物に近い古細菌のグループは、ロキアーキオータと呼ばれています。ロキアーキオータを調べていけば、古細菌から真核生物への進化の過程が明らかにできます。このロキアーキオータを調べるのが、非常に難しかったのです。
 今回の報告では、やっとその生物を調べることができて、謎の解明がはじまったという報告でした。なんと、その古生物を調べる条件を整えるに、井町さんは12年もかけました。大変な労力をかけられた研究でした。
 次回から、まずはロキアーキオータの生物学的位置づけにから、見ていきましょう。


Letter■ 新年度・集中講義

・新年度・
新年度になりました。
大学も入構禁止がとけましたが、
まだ、慎重な対応をとっています。
入学式も中止、新入生や在学生へのガイダンスも
最小限しかしないことになっています。
本来なら、新入生は、楽しく期待に満ちた日が
はじるはずだったのですが。
静かな、新年度の幕開けとなりました。

・集中講義・
3月上旬におこなうべき集中講義を
3月末におこなうことになりました。
いろいろと注意をしながらの開催でした。
時間割も、ぎりぎりに詰めておこなっています。
この時期にしなければ、
新年度に間に合わせることがでてきません。
ぎりぎりの対応となりました。