生命の歴史
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Essay■ 2_167 単細胞から多細胞へ 1:共生
Letter■ 集中講義・祝う会
Words ■ 3月は別れの季節


(2019.03.21)
 生物の進化には、いくつか大きな飛躍があります。その飛躍は簡単に起こることなのでしょう。飛躍の中には、短時間で起こったと考えられるものがあります。共生と呼ばれているものです。


Essay■ 2_167 単細胞から多細胞へ 1:共生

 生物の進化には、いくつかの大きな飛躍があるように見えます。飛躍とは、その生物にとって後の進化に重要な役割を果たす機能を獲得することです。しかし、そのような飛躍は、生物が後を進化をしようと意図して得るものではなく、たまたま起こった試行錯誤の結果が成功して、生存競争に勝つことができ子孫を残すことができたのでしょう。
 よく知られている飛躍としては、光合成の獲得、好気性、多細胞化、脊椎の獲得、海から陸への進化、恒温性などがあるでしょうか。いずれの飛躍も、進化に大きな節目となっているものでしょう。しかし、その獲得は、ある日突然身につけることができるのでしょうか。
 例えば光合成ですが、真核生物では藻類と植物だけが持っている仕組みです。光合成は、細胞内にある葉緑体でおこなわれています。光合成の能力は、ある時、突然、獲得できた能力だと考えられています。大型の真核生物が、シアノバクテリアを取り込んだことではじまったことがわかりました。このようなものを「共生」と呼んでいます。本来なら小さな細胞を取り込むということは、「食べる」ことになります。しかし、食べることなく、共生をしたのです。葉緑体には二重の細胞膜があり、外は真核生物のものですが、内側が別の生物ものでした。そのことから、食べることなく、取り込まれたことがわかってきました。たまたま起こったことのようです。
 葉緑素は植物や藻類だけがもっているのですが、ミトコンドリアも二重の細胞膜をもっていることがわかってきました。ミトコンドリアは、すべての真核生物が持っている細胞内の小器官です。ミトコンドリアの役割は、酸素を利用してATP(アデノシン三リン酸)をつくりだし、真核生物に供給することです。ATPは、リン酸の分子が分離したり結合したりして、エネルギーの放出・貯蔵ができる物質で、非常に重要な物質です。ATPをミトコンドリアは、真核生物に供給していることになります。
 細胞にとって酸素は、非常に危険な存在です。酸素は、細胞の内のさまざまな物質を酸化してしまうので、酸素への対処ができないと、その生物は死んでしまいます。だからミトコンドリアのない生物は、酸素のない環境(嫌気性)でしか生きていません。しかし、ミトコンドリアがあれば、酸素の多い環境(好気性)であっても、細胞内の酸素をうまく処理してくれます。処理だけではなく、酸素を用いてエネルギーを供給するATPをもたらしてくれます。こんないいことはありません。ミトコンドリアは、好気性細菌の一種で、葉緑体と同様に共生したことがわかってきました。
 共生があったことは、種類によって、葉緑体やミトコンドリアを取り出しても、生きていけるものがいることからも、確からしいと考えられています。他の生物を取り込む共生という仕組みは、ある時から急にできることになります。
 一方、脊椎の獲得や陸への進化などは、長い時間をかけて試行錯誤が必要だと思われます。では、多細胞化はどうでしょうか。最近、それに関する重要な報告が出ました。詳しくは次回以降にしましょう。


Letter■ 集中講義・祝う会

・集中講義・
先週は、集中講義があり終了直後に
学位記授与式(卒業式)もありました。
大きな行事が2つ連続してあったので
先週は非常に忙しい思いをしました。
本エッセイも前の週に予め予約しておきました。
おかげで今週から来週にかけては
落ち着いて仕事ができます。
今週も来週も送別会があるので飲み会があります。
3月いっぱいで、親しい人が去っていきます。
なかなか寂しいものです。
近くに住んでいるのであれば、
近い内に会うこともできます。
親しい人は、こちらを引き払うので
会う機会はなかなかなさそうです。

・祝う会・
先週末、学位記授与式がありました。
そのあと大学祝う会があり
さらにその後に学科の祝う会がありました。
今年は担当している4年生がいなかったので
少々寂しくもありました。
しかし結果的に、多くの4年生と
いろいろな思い出を語ることができよかったです。