生命の歴史
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Essay■ 2_166 絶滅からの復活 4:短期間の復活
Letter■ 年末には・今年最後に
Words ■ よいお年をお迎えください


(2018.12.27)
 生物の回復の時間は非常に短時間であるという報告でした。その種が絶滅し、どの種が生き残るかは、偶然が左右したようです。そして生態系の回復も偶然が左右したようです。


Essay■ 2_166 絶滅からの復活 4:短期間の復活

 ユカタン半島沖の海底でボーリングされたコアには、衝突でできたスエバイトと76cm分の遷移帯がありました。スエバイトは衝突によってできた堆積物で、遷移帯の堆積物は、衝突直後の短時間の激しい擾乱があったときの堆積作用の記録となります。それらを解析していくと、どのようなことがわかってきたのでしょうか。
 3万年ほどあとには、確実に生物が回復していることが、化石からわかったことは、前回紹介しました。3万年という期間は予想外の早さです。しかし、他の情報では、もっと早くに回復しているという結果がでてきました。隕石に由来する成分(3He)を調べると、それが回復するのに必要な年代を見積もると、もし再堆積していなければ8000年、再堆積しているならば1000年以下という期間になることが推定できます。今回の試料では、1000年以下と推定されています。
 論文では、衝突後、2から3年以内には環境が回復していたという、予想外の結果がでてきました。クレーター内にもかかわらず、あっという間に、生物が生息可能な環境が復活したことになります。そして、3万年後には、植物性プランクトンを基礎とするような生態系が復活しています。
 本当に絶滅が起こったのかという疑問すら生まれます。しかし、隕石による大絶滅があったことは、大量の化石の証拠からも、さまざまな研究からも検証されていると考えていいはずです。グランド・ゼロでの情報ですから、世界に視野を広げれば、もっと回復は早いところもあったはずです。この結果は何を意味するのでしょう。
 隕石の衝突によって、生物の大絶滅は起こりました。しかし、その異変は生物の復活や環境の回復をも阻止するものではなかったということです。生き残った種は少数でしたが、短期間に地球生命の生態系は、復活してきたことになります。
 どのような種が絶滅するかは、隕石がどこに衝突するかによって大きく左右されるはずです。K-Pg境界の衝突では、たまたまユカタン半島沖でした。別のところだと、全く違った種が絶滅していたはずです。どれが絶滅するかは、偶然によって決まったのです。大絶滅ですから、地球のいたるところで、多くの種が絶滅しているので、不幸は平等に訪れたはずです。
 その後の環境が回復したとしても、多くの生物種は絶滅しているので、過去とは全く異なった新たな生物種間の競争が生まれます。どの種がどの環境で優勢になり繁栄するかは、偶然が左右していたことになります。その結果として生まれる生態系は、予想もつかないものとなります。その競争で勝った生物たちが、現在の生態系の新たな基礎を築いたことになります。
 私たち人類も、その偶然の延長線状にあるいるひとつの種なのです。進化に関して、すくなくともK-Pg境界では、神様はサイコロ遊びをしたようです。


Letter■ 年末には・今年最後に

・年末には・
22日が冬至の日も雪はちらついていましたが、
それほど寒くはありませんでした。
まだ寒い日がくるようですが。
皆様の家庭では、年末の準備は進んでいますか。
我が家、暮れも正月も日常モードになっています。
これは例年のことですが。
年末餅つき、年越しそば、三ヶ日の朝食の雑煮は
例年と変わらずにおこないます。
正月は穏やかに明けてくれるといいのですが。

・今年最後に・
今年、このエッセイが最後になります。
1年のまとめのエッセイにして終えようかと思いました。
しかしこのシリーズが、今回で終わりになるので、
これだけを来年に回すのも違和感がありました。
ですから、これが今年最後のエッセイとなりました。
来年もよろしくお願いします。