生命の歴史
表紙に戻る

Essay■ 2_163 絶滅からの復活 1:グランド・ゼロ
Letter■ K-Pg境界・冬への身構え
Words ■ いよいよ師走となりました


(2018.12.06)
 白亜紀末の恐竜の絶滅は、地球の歴史、生命の歴史において、大きな事件でした。事件のあったことは、多くの証拠から検証されています。しかし、絶滅に至るシナリオ、絶滅からの復活のシナリオは、まだ十分ではありません。


Essay■ 2_163 絶滅からの復活 1:グランド・ゼロ

 白亜紀末、K-Pg境界と呼ばれる時代の恐竜絶滅の事件は、多くの人がよく知るものになっています。それは長年かかって、研究者たちが作り上げ、普及してきた結果でもあります。恐竜だけでなく、その時生きていた生物も同時にたくさん絶滅したこともご存知だと思います。生物の絶滅率は、約76%に達したと考えられています。絶滅率とは、個体数ではなく、生物種が76%と絶滅したいうものなので、非常に大変な絶滅になります。
 絶滅の直接の原因が、隕石の衝突によるものであることも、よく知られていることでしょう。衝突した隕石は、直径10kmほどで、メキシコのユカタン半島の北の海に落ちました。その衝突によって、激しい衝撃波、さまざまな放出物(高温高圧で変形したり、変成したり、溶けたりしたものも含みます)、想像を絶する大津波など、人類がこれまで経験したことのないスケールの現象が、いろいろと起こりました。もちろん、衝突とその時の激しい現象から派生したさまざまな異変、例えば大規模な森林火災(日本でもススの地層が見つかっています)や酸性雨、太陽光の遮蔽(長期の暗闇)など短期の異変から、長期におよぶ気候変動など、さまざまな時間スケールの異変があったと考えられています。
 絶滅は、陸だけでなく海でも、また他の大陸でも起こっているので、さまざまな場や環境へ、それも広域にダメージが及んでいます。絶滅の原因が隕石の衝突という瞬間的な事件なので、地球史的には短期間に激しい天変地異があったことが伺われます。非常に興味の湧くテーマですが、そのシナリオはまだ完成していません。
 さて、今回紹介するのは、絶滅のシナリオではなく、絶滅からの生物種の復活に関する新しい見解です。論文は、今年の5月に権威のある科学雑誌、Nature(オンライン版)に報告されました。論文のタイトルは、
Rapid recovery of life at ground zero of the end Cretaceous mass extinction
(白亜紀末のグランド・ゼロでの生命の急激に復活)
というものでした。
 グランド・ゼロという言葉は、2011年のアメリカ同時多発テロ事件、9.11で倒壊したワールド・トレード・センターの跡地をそう呼んだので有名になりました。しかし、もともとは英語で、爆心地を意味する言葉です。特に、核兵器(原子爆弾や水素爆弾)など、巨大な爆弾による爆心地をいうことが多いようです。広島と長崎の爆心地も、グランド・ゼロと呼ばれています。K^Pg境界の衝突の爆心地も、グランド・ゼロとなります。
 グランド・ゼロで、生物が急速に復活しているという報告でした。詳細は次回以降としましょう。


Letter■ K-Pg境界・冬への身構え

・K-Pg境界・
K-Pg境界は、もともとはK-T境界と呼ばれていました。
しかし、地質学の学界で、時代名称として
第三紀(Tertiary)が使わないという決定がでました。
第三紀が消え、古第三紀と新第三紀に区分されました。
そのため、K-T境界は、
白亜紀(Cretaceous)−古第三紀(Paleogene)となり、
現在では、K-Pg境界と専門家では呼ぶようになりました。
まだ普及していないかもしれませんが、
専門家はこの時代名称を使い続けていく必要があります。
根気強く使い続けていれば、隕石による恐竜絶滅のように
やかがては、市民に普及していくはずです。
本当は、恐竜絶滅の時にK-Pg境界を
使っていればよかったのですが・・・。

・冬への身構え・
今年の北海道は、冬の到来が遅かった分、
寒さへの体の対応も少々遅れ気味です。
初冠雪や里への初雪で、冬の到来を感じます。
ただし、体の方は、少々鈍感で、
寒波が来ると体にも冬の到来が伝わるようです。
ですが、何度か積雪、そして何度かの寒波がありました。
冬が到来したことを、体も理解したようです。
寒さに対して、心構えと身構えもできました。