生命の歴史
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Essay■ 2_162 ムカワリュウ 3:ティラノサウルス
Letter■ 野外調査・季節感
Words ■ 雪はもう少し遅い方がいい


(2018.11.01)
 2016年に発見された1個の化石は「ムカワリュウ」と呼ばれました。ムカワリウは、ティラノサウルスの仲間であったことが、2018年6月に発表されました。この1個の化石が意味することはどんなことでしょうか。


Essay■ 2_162 ムカワリュウ 3:ティラノサウルス

 2016年6月に北海道の中央に位置する芦別市から、「ムカワリュウ」が発見されました。2018年6月にその内容がやっと発表されました。化石の出た地層は、エゾ層群の羽幌川層でした。時代は白亜紀後期コニアシアン(8630万〜8980万年前)です。
 この地層からは、サメの歯の化石や貝化石もでていましたが、2016年にアマチュアの人が、これまでにない化石を発見しました。長さ9cm、高さ6cm、幅5cmほどの円柱形で、かなり大きなもので、動物の脊椎の骨のような形でした。北海道大学と三笠市立博物館が、この化石を調べました。形だけでなく、CTスキャンで内部構造も調べたところ、脊椎の骨のうち、円柱形をしている「椎体」であることがわかりました。サイズや形から、体長6メートルほどの中型のティラノサウルス類のものの可能性が高いことがわかりました。
 発見された地層のコニアシアンという時代は、ティラノサウルスがあまり見つかっていない時代でした。そして、ティラノサウルスが大型化していく時代でもありました。両方の意味で、重要な化石であると考えられています。
 日本では、20世紀後半から化石が見つかりはじめます。化石は過去に生きていた生物が、土砂に埋もれていくわけですから、近年に化石が増えたわけではありません。見つかる機会が増えたことになります。20世紀後半は、日本各地で開発が進み、それまで人があまり入ってこなかったところが切り拓かれていき、道路が山間にも入り込み、これまで人目に触れていなかった地層が調べられるようになったからでしょうか。そんな地層の中に、恐竜が生きていた時代にできた地層もありました。
 21世紀になると、化石の詳細な記載が日本人研究者から発表されるようになってきました。これは、海外などで経験を積んだ日本の研究者の育成が進んできたことを表しているのでしょう。日本の身近なところから恐竜化石が見つかるようになり、その化石がすぐに研究者に渡り調べることができるシステムが完成してきました。日本でも恐竜を研究できる環境も整ってきて、後進の育成も進んできた結果なのでしょう。
 今後も化石の発見の機会は増えていくのでしょうが、それが恐竜のような重要な化石であれば、しかるべき研究者が研究されるシステムができてきました。これからは、重要な化石はすぐに記載が進んでいくでしょう。


Letter■ 野外調査・季節感

・野外調査・
今週末、日高山脈を浦河から襟裳岬をまわり
広尾まで抜ける調査にでます。
できれば、もう一度、野外調査に出たいのですが
そろそろ雪が季節なので
今シーズンの最後の調査になるかもしれません。
自家用車は冬タイヤにはしていますが、
峠で雪が降る時期は、野外での調査は厳しくなります。
今年は、いろいろな事情から
野外調査を道内で何度も行うことになりました。
道南を主にして、他にも道央、そして今回の日高など、
7回の調査を週末を使って行いました。
その多くは、2泊3日ででかけました。
往復にそれなりの時間がかかるので
短期の調査ではロスも多いですが、
大学の講義を休むことなく、気軽にいけます。
また時間調整をしなくてもいいし
時期が限定されることもないので楽でした。

・季節感・
いよいよ11月です。
雪虫も何度か飛びました。
手稲の山並みも、冠雪はまだみていません。
わが町で初霜はありましたが、初雪はまだです。
黒岳の初雪は早かったのですが、
里の雪は遅いようです。
大学では推薦入試の季節に入ります。
後期の講義も半ばになってきました。
大学ではいくつかの年中行事があるので、
季節に変動あっても、季節感は感じます。