生命の歴史
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Essay■ 2_160 ムカワリュウ 1:1934か1978か、それとも21
Letter■ 復元骨格・雪虫
Words ■ 初雪は近いようです


(2018.10.18)
 恐竜の化石の発見は、日本でも最近はよく聞くニュースとなりました。しかし、化石の発見は、ほんの40年ほど前のことです。恐竜研究や研究者養成は、もっと後のことでした。


Essay■ 2_160 ムカワリュウ 1:1934か1978か、それとも21

 かつて日本では、恐竜の化石はほとんど見つかることがなく、恐竜発掘や研究は欧米での話だと考えられていました。ですから、恐竜研究をしたければ、アメリカやヨーロッパにいって、そちらの標本を借りて、研究しなければならない状況でした。日本では、恐竜の研究者も少ない状態でした。
 日本で最初の恐竜の発見は、1934年のことでした。北海道大学の長尾巧教授のもとに、恐竜の化石が発見されたという一報がありました。場所は、当時日本領であった樺太の川上炭坑(現シネゴルスク)の病院の建築現場でした。化石を取り出すために、建築中の病院を壊しています。3年かけて発掘した結果、全身の60%(40%とも)の骨が発掘されました。今でも、日本でもっとも保存状態のよい恐竜化石となっています。
 その恐竜は、ニッポノサウルス・サハリネンシス(Nipponosaurus sachalinensis)として、1936年に報告されました。通称、ニッポノサウルスという名称と呼ばれています。しかし、この化石の詳しい研究は、ほとんど進められることなく、北大に埋もれたままになっていました。その後、2004年に再び研究されて、ハドロサウルス科の恐竜で、大人になる前のもの(2歳〜3歳の亜成体)だとわかりました。復元骨格のレプリカがつくられ、現在では、北海道大学総合博物館と国立科学博物館に展示されています。
 樺太は当時日本領だったのですが、現在はロシア領になっています。ですから、日本産とはいいづらいものがあります。
 日本国内での発見は、1978年、岩手県岩泉町茂師(もし)で発見されたフタバスズキリュウ(学名:Futabasaurus suzukii フタバサウルス・スズキイ)です。首長竜のプレシオサウルスの仲間です。上腕骨が発見され、発見場所にちなんでモシリュウと呼ばれています。これも、2006年に佐藤たまきと真鍋真主、長谷川善和館さんたちが記載して、新属の新種の首長竜と判明しました。
 最初の恐竜の発見が40年前のことですから、日本の恐竜発掘の歴史は、浅いものです。また、恐竜の記載の状況を見ると、恐竜の研究者も、21世紀になって、やっと何人も育ってきたように見えます。今では、日本各地から恐竜の化石が、各地で研究者が育ってきました。


Letter■ 復元骨格・雪虫

・復元骨格・
ニッポノサウルスの復元骨格には、少々、思い出があります。
当時国立科学博物館の地学部長をされておられたSさんと
ある学会誌で博物館の特集を組むことになりました。
その時、一緒に編集作業をしているとき、
Sさんから、国立科学博物館で
ニッポノサウルスのレプリカを作成している
という話を聞きました。
それはいい思い、二人で相談して、
その特集の表紙をニッポノサウルスの復元骨格で飾ることにしました。
その表紙は、なかなかいい出来だったと思っています。

・雪虫・
北海道は、ここしばらく、
はっきりしない天気が続いています。
一日のうちで、晴れたり、曇ったり、
雨が降ったり、それが繰り返されます。
先日の晴れた日の夕方、
今年はじめての雪虫を見ました。
しかし、大量発生ではなく、少ない数でした。
雪虫が飛ぶと初雪が近いと言われていますが、
今年の秋の深まりは、人にも雪虫にも、
ややこしいようです。
でも、着実に、冬は近づいいます。