生命の歴史
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Essay■ 2_152 オルドビス紀末の大絶滅 6:さて原因は?
Letter■ GOBE・人間ドック
Words ■ 夏は終わったのでしょうか。北海道は秋めいてきました


(2017.08.24)
 3回の水銀の濃集の時期は、LIP(巨大火成岩岩石区)の活動時期と一致していました。水銀の濃集は、LIPのマグマの活動に由来していると考えられました。LIPと大絶滅とは、どのように連鎖していたのでしょうか。


Essay■ 2_152 オルドビス紀末の大絶滅 6:さて原因は?

 オルドビス紀は、前期、中期、後期に区分されます。さらに、オルドビス紀後期は、サンドビアン期(Sandbian、4億5840万〜4億5300万年前)、カッティアン期(Katian、4億5300万〜4億4520万年前)、ヒルナンシアン期(Hirnantian、4億4520万〜4億4380万年前)の3つに区分されています。
 オルドビス紀末の大絶滅は、時代境界ではなく、ヒルナンシアン期に入る時期と終わる時期に、2度にわたって起こっています。他の時代の大絶滅とは違って、一度の出来事によるものではありませんでした。2度にわたって起こった出来事に起因しているようです。
 カッティアン期は比較的安定した気候だったのですが、その後のヒルナンシアン期になると、急激な寒冷化が起こります。大絶滅は寒冷化のはじまりと終わりに起こっています。ですから、寒冷化と大絶滅には、なんらかの関係があったと考えられます。
 寒冷化は、南極に広がっていたゴンドワナ大陸が氷床に覆われるようになりました。極地の大陸に氷床が解けずに夏も残っていると、地球の太陽光の反射率(アルベドと呼ばれています)が大きくなり、地球が暖まることなく、寒冷化がさらに進むことになります。寒冷化の連鎖により、一気に氷河期へと入っていきました。氷河期のはじまりの頃に、最初の大絶滅が起こりました。
 逆に氷河の終わりは温暖化が起こるときも、一気に進みます。北半球の海水が一気に温まり、温度の上昇し温暖化が起こります。すると冷たい氷河の融解した冷たく重い水が海洋底に入り込みます。その時、海洋の大酸欠が起こりました。この氷河期の終わりの時期に、2度目の大絶滅が起こりました。
 この氷河期の前後の大絶滅は、水銀の2度目と3度目の濃集に対応しています。大絶滅とLIPとの関係はどのようなものだったのでしょうか。実はまだ解明されていません。
 1度目の大噴火(水銀濃集)は、大きな気候変動を起こすことなかったようです。しかし、2度目の噴火では寒冷化の時期に起こっています。3度目の噴火では温暖化を起こした時期になります。
 もしLIPが気候変動が起こしているとすると、不思議なことになります。巨大なマグマの活動(大噴火)によって、ある時は寒冷化、ある時は温暖化、あるいは気候変動がないことになります。そうなると本当にLIPが原因といえるのでしょうか。
 本来大噴火が起これば、大量のCO2を放出することになるので、単純な効果として温暖化が起こると考えられます。しかし、多くの水銀を放出するような大噴火であれば、同時に酸化硫黄(SO2)も大量に放出されると予想されます。大気中で酸化硫黄は、水蒸気の反応して硫酸の粒子(エアロゾル)となります。成層圏に大量のエアロゾルができると、太陽光を反射してしまうので、寒冷化が起る可能性を論文では指摘しています。
 全地球的な大噴火によって起こる気候変動が、全く違ったものになるという理解しがたい状況となります。他に何らかの要因が働いていたはずです。その究明は、今後の課題でしょう。
 また、LIPの特定も必要になるでしょう。論文では、LIPの候補として、カナダのニューファンドランドのケープ・セント・マリー・シル(Cape St. Mary's sills)とロシアのシベリアのスオルダコフ(Suordakh)、アルゼンチンのシラ・デル・ティグレ(Sierra del Tigre)の3つが挙げられています。オルドビス紀には、LIPは比較的近くありました。ただ、年代が正確に決まっていないので、どれかは限定されていません。
 水銀の3度の濃集は事実です。そこからLIPがあったという推定も理解できます。その先がまだ解明されていません。少々欲求不満になりそうですが、科学とは地道に一歩ずつ進めていくしかないのでしょうね。


Letter■ GOBE・人間ドック

・GOBE・
今回は、オルドビス紀末の大絶滅を紹介したのですが、
オルドビス紀は、生物の多様化が起こった時期でもあります。
「オルドビス紀生物大放散イベント」
great Ordovician biodiversification event(GOBE)
と呼ばれています。
海洋の動物と植物で大きな多様化が起こりました。
カンブリア紀に、ビックファイブには入っていませんが、
大絶滅が起こっています。
その後にGOBEになりました。
そこに、大絶滅が起こりました。
多様化が起こった直後の大絶滅は
ダメージが大きかったでしょう。
地球生物にとっては、大絶滅は、
進化を大きく進める役割もあったのでしょう。

・人間ドック・
毎年この時期になると、日帰りの人間ドックに
家内とともにいくことにしています。
長年通っていた病院を、昨年から変更しました。
それまでは人間ドック専用の病院でしていましたが、
車でいける総合病院にしました。
再検査や精密検査が必要になったとき
改めて別の総合病院に行く必要があります。
最初から総合病院でおこなったほうが、便利だからです。
そんな理由で、家内がかかっている病院に
変えることにしました。